トランプ氏が再び大統領に就任し、米中間の貿易戦争が新たな局面に突入した。世界政治ルールを一変させる中で、習近平は未曾有の混乱に直面しているようだ。この記事では、貿易戦争の再開が世界経済に及ぼす影響と、国際政治における新しい動きを詳細に分析してみよう。
米中貿易戦争2.0は、トランプ氏が再び米国大統領に就任したことで再開した。2月4日、米国税関は香港を含む中国からの輸出品に10%の追加関税を課すと発表した。同日、中国は一部の米国製品に10%から15%の関税を課し、Google社に対する独占禁止法調査を開始すると宣言した。これらの措置は米中貿易戦争2.0の前哨戦と見なされている。
今回の貿易戦争の本質は、経済的利益の争いだけでなく、政治的な理由もあるのだろうか? 米国が中国の台頭を望まないからなのか、中国共産党からの歴史的な脅威によるものなのか? 貿易戦争はどのように展開し、どのような結末を迎えるのだろうか? これらは、トランプ氏と習近平がこの貿易戦争をどのように戦うかにかかっている。
貿易戦争2.0の嵐が到来し、習近平は混乱し、官製メディアは異常に沈黙する
海外中国民主党の王軍濤(おうぐんとう)主席は新唐人の『菁英論壇』番組で次のように述べた。トランプ氏の貿易戦争2.0が正式に始まったと述べた。今回、中国共産党の官製メディアがほぼ完全に沈黙している。これには二つの理由がある。一つは、習近平が就任後、彼一人を崇拝する独裁体制を確立し、すべての公式メディアが習近平の指示に従って宣伝を行わなければならなくなったことだ。二つ目は、習近平がトランプ氏を誤った判断をしたため、今どうすべきか分からず、指示を出さないので、誰も行動を起こさないことだ。
例を挙げると、以前、習近平が大きな手を打つと言われていたが、私は彼がすでに策を尽くした状態で、さらに米中関係を改善する必要があると述べていたことだ。
2023年初めから昨年11月にバイデン前大統領に会うまで、習は常にその努力を続けていた。しかし、その後、アメリカの選挙戦が始まり、彼は少し躊躇していた。
その後、トランプ大統領が習近平をワシントンに招待し、就任式に出席するように頼み、高い待遇を約束し、世界の問題を一緒に解決しようと提案した。
習近平はその時、米中関係が改善したと感じ、中国のメディアにトランプ氏に好意的な態度を示すよう指示した。春節の特別番組ではアメリカ関連の演目も行われたが、これは前例のないことだった。しかし、トランプ氏が就任するとすぐに貿易戦争が再開され、習近平は混乱した。彼は状況を分析しようとしたが、メディアは何をすべきか分からなくなった。少し前まで米中関係が良くなると言っていたのに、今やアメリカに面子を潰されたからだ。面子を潰された時に良いと言えるはずがなく、彼は今、どうすべきか決めかねていると思う。
当時、トランプ大統領が習近平を招待した際、多くの人が独裁者に大きな礼遇を与える理由を疑問視していた。王軍濤氏はその時、他のチャンネルで、トランプ大統領に目をつけられた人は不運だと述べていた。トランプ氏はそういう人物で、アメリカが問題を解決するのは非常に簡単だ。一つか二つの問題に焦点を当て、その問題には必ず重要なパートナーがいて、解決を試みる。最初は相談を持ちかけるが、トランプ氏は相談というより、実際には提案に過ぎず、受け入れなければ極限まで圧力をかけ、乱打戦を仕掛けて相手を倒す。だから今、習近平は混乱しており、彼が混乱すると、中国のメディアも混乱し、何をすべきか分からなくなるという状況なのだ。
王軍濤氏は、2016年にトランプ氏が大統領に就任し貿易戦争を開始した際、中国は2ラウンドで手札を使い果たしたと述べている。アメリカは中国に対して1兆ドルの貿易赤字を抱えており、制裁を行えば十分な製品に制裁を加えることができる。一方、アメリカが中国に進出する際、中国は多くの貿易障壁を設けていた。当時、中国共産党は「他人が我々をどう扱おうとも、我々はドアを開け続ける」と宣伝していたが、実際には体面を保つ方法を探しているだけで、もはや打つ手はなかった。
今年、トランプ氏が中国に10%の関税を課したのは、彼が一期目に課した関税をバイデン氏が撤回しなかった。そのため、その基礎の上にさらに10%を追加したのである。
前回の関税戦争は純粋に経済的なものであった。当時、トランプ氏は中国共産党がアメリカでダンピングを行い、国家が補助金を出し、アメリカ製品に貿易障壁を設け、知的財産権の対価を支払わないため、アメリカは関税で、中国の利益を相殺する必要があると明言していた。
今回はトランプ氏の国際的な視野が変わったことが明らかである。例えば、グリーンランドやパナマ運河について、トランプ大統領は中国共産党に言及しており、今や中国共産党をアメリカの最も重要な対抗相手として位置づけている。
トランプ氏が世界の政治ルールを変え、習近平は状況を理解できない
王軍濤氏は『菁英論壇』で、北京の視点から現在のシミュレーションを行う必要があると述べた。今は判断を下すのではなく、二つの要素を考慮する必要がある。アメリカとの対立を続ける場合、習近平は耐えられず緩和を試みるだろうが、その方法は不明である。トランプ氏が乱打戦を仕掛けているため、彼らはトランプの要求すら理解できていない。習近平はトランプ氏が10%の関税を課した理由が成立しないと感じている。トランプ氏の意図が不明であることが、実際には大きな問題である。
国際政治が始まって以来、西側諸国は宗教戦争で疲れ果て、国際政治のメカニズムを導入した。各主権国家は自国の事を管理し、他国の信仰に干渉しないということである。その結果、国際政治は地政学を最優先し、経済は地政学的ニーズに従属していた。しかし、トランプ氏はこれを覆し、経済貿易を最優先し、地政学を経済貿易に従属させた。これは大きな変化である。
世界が再編される時、最も敏感な権力者は商業界である。彼らは消費者の心理を注視している。一方、伝統的な政治家は一般市民に対して鈍感である。トランプ氏が大幅にリードできているのは、彼が民意を把握する能力が全てのアメリカのエリートよりも正確であることを示している。彼は経済活動の中で民意と密接に接触している。
王軍濤氏は、トランプ大統領が現在、世界各国と貿易カードを使って戦っていると述べている。従来は軍事力や空母、戦闘機の脅威で相手を抑え込もうとしていたが、今は経済貿易の手段に変わり、非常に効果的で、空母よりも効果があるようだ。空母で圧迫しても、すぐには効果が現れない。メキシコやカナダはすぐに従ったが、中国も同様だ。中国の周辺で軍事同盟を増やしても、中国を攻撃することはできない。アメリカが1、2隻の空母を派遣しても、習近平はミサイルや核兵器を持ち出し、アメリカを押し返すだろう。しかし、経済貿易戦争が始まり関税が課されると、習近平は混乱した。中国共産党だけでなく、世界中の政治家もトランプ氏に混乱させられている。彼は世界各国と戦っているが、その理由が異なるだけである。
王軍濤氏は次のように述べている:トランプ大統領は中国共産党に何を求めているのか、彼は中国共産党がアメリカの最大の敵であることを確信している。貿易戦争で10%の関税を課すことで、中国共産党を混乱させ、打ちのめすことは可能であるが、完全に倒すことはできない。彼の次の行動はまだ明確ではない。トランプ氏の周囲にはタカ派が多く、彼らは中国との関係を断ち切りたいと考えている。もし北京が従わなければ、アメリカとの関係が本当に断絶する可能性がある。私がワシントンでタカ派の人々と話した際、彼らは習近平が台湾や南シナ海で問題を起こすことを期待していた。問題が起これば、彼らは中国を完全に封鎖し、関係を徹底的に断ち切ることができ、そうなればアメリカの大企業も何も言えなくなるだろう。
中国共産党は譲歩できないか? 中米間の全面的な衝突の可能性
ベテランジャーナリストの郭君氏は『菁英論壇』で次のように述べている。中米貿易戦争の本質は貿易戦争ではない。貿易は重要だが、アメリカは毎年4600億ドル以上の貿易赤字を長期間続けることはできない。しかし、習近平にとって、貿易問題は最も重要ではない。
2024年のアメリカ大統領選挙後、習近平は南米でバイデン大統領と会い、4つのレッドラインを提示した。それは台湾問題、民主主義、社会制度、発展の権利である。習近平はこれらが中国側の4つのレッドラインであり、挑戦を許さず、中米関係の重要な防護柵と安全網であると述べた。4つのレッドラインのうち、発展の権利だけが貿易と関係があり、他の3つは貿易とは無関係である。
簡単に言えば、中国共産党はアメリカ人が貿易戦争を仕掛けるのは表向きの理由で、実際には別の目的があると考えている。その目的は、中国の台頭を阻止し、中国がアメリカを追い越すことを許さないことである。具体的には、共産党の指導を覆し、中国の社会制度を変えることである。これは中国共産党自身がそのように行動しているため、自然な考え方である。
例えば、中国が台湾とビジネスや貿易を行ったり、貿易制裁を実施したりする場合、それらは経済や貿易そのものを目的としているのではなく、背後に政治的な目標がある。したがって、中国共産党は他者も同様に考えていると感じている。この見方が完全に間違っているわけではない。二国間の競争では国力の競争が重要であり、貿易や技術は国力の重要な要素で、一歩も譲れないものである。
郭君氏は次のように述べている。アメリカの目標は、社会エリートのコンセンサス、すなわち二大政党の合意であると考えている。トランプ氏は貿易戦争を目標達成のための最初の手段として選んだ。一期目のトランプ氏の関税措置を見れば、バイデン氏は就任後もそれを完全に受け入れ、関税を引き下げていないことがわかる。バイデン政権のアプローチは、中国の言葉で言う「小さな庭に高い壁」、つまりいくつかの重要な分野に厳しい措置を講じることである。
しかし、バイデン政権の「小さな庭に高い壁」戦略は効果を上げていない。最近話題のDeepSeekのAIプラットフォームを見れば、中国共産党に対する高性能AIチップの禁輸が成功していないことが明らかである。「幻方量化」社は4万から5万個のNVIDIAの高性能AIチップを入手しており、「小さな庭に高い壁」は中国共産党を全く阻止できていない。したがって、トランプ氏が貿易戦争を仕掛けたのは、再び武器を変えたようなものである。
アメリカはヨーロッパと貿易戦争を行い、以前には日本とも貿易戦争を経験したが、その目的は主に貿易や経済にあった。しかし、中国共産党との貿易戦争は、単なる経済や貿易を超えた深い問題に関わっている。6年前、中国共産党はアメリカと西側に対し「東昇西降」という見方を持っていた。アメリカは日々悪化し、中国は日々改善しているとされている。多くの中国共産党のシンクタンクや国際的な専門家は、2023年または2024年までに中国の経済規模がアメリカを超えるとする研究結果を示していた。中には、中国はすでにアメリカを追い越したと考える専門家もいた。
したがって、前回トランプ氏が中国共産党との貿易戦争を始めた際、中国共産党は強硬な姿勢で応じた。しかし、近年、中国経済は深刻な問題に直面し、アメリカを追い越すどころか、むしろその差が広がっている。外交や地政学的には受け身になり、政治的同盟国も減少し、国際的には受け身の姿勢が強まっている。さらに、科学技術のデカップリングが後遺症を示し始めている。したがって、今回の中国共産党の態度は、前回よりもさらに慎重にならざる負えないと考えられている。
王軍濤氏は『菁英論壇』で次のように述べている。トランプ氏が求めることが、中国共産党は受け入れられない。例えば、第一ラウンドの貿易交渉後、彼はインターネットの開放を求めたが、共産党はそれを恐れている。トランプ氏はビジネスの観点から理解しており、最も利益を上げるのはインターネットであり、高度な技術と結びついている。
最後に開放を阻止したのは、中国共産党の中の上海派とされている。彼らは伝統的な共産党の元老の子供たちとは異なり、元老の子供たちは、国有企業に関与しているが、上海派はプライベートエクイティファンドや高度な技術に携わっている。江沢民や朱鎔基(しゅようき)の子供たちがインターネット分野の企業に関与しており、インターネット分野が開放されると、彼らはアメリカに対して競争力を失うため、開放を望まなかった。その結果、米中貿易協定は成立せず、劉鶴(りゅうかく)は成果を得られずに帰国した。したがって、トランプ氏と中国共産党の矛盾は経済貿易の観点からも調和しなかったのだ。私は、トランプ大統領が何を考えているかに関わらず、最終的には米中間の全面的な衝突が避けられないと考えている。
大紀元の主筆の石山氏は『菁英論壇』で次のように述べている。現在の習近平は、リーダーとして絶対的な権威を持つ人物と見なされているが、私はそうは考えていない。彼は中国古代の草原民族の首領のような存在だ。彼の下には部族連合があり、利益がある限り、皆彼の指示に従う。
現在、米中貿易戦争の進展において、直面している最大の問題は、譲歩ができないことだ。各分野が下位の部族の利益を代表しており、どの部族にも譲歩すれば、部族連合全体が解体の危機に直面する可能性がある。石油や通信、銀行、インターネットは譲れない。一度譲歩し始めると、すぐに背後で反乱が起こる。これが彼が現在直面している最大の問題だと言う。
石山氏は次のように述べている。したがって、米中間の貿易戦争は最悪の状況に向かうだろう。全面戦争だ。非常に恐ろしいことである。
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