アップルは、トランプ政権による関税政策と米中貿易摩擦に対応するため、iPhoneの生産ラインを中国からインドへ急速に移転している。関係者によると、アップルは2026年末までにアメリカ向けの全iPhoneをインドで製造する計画で、早ければ2025年から多くの機種をインドで組み立てる可能性がある。これは、同社のグローバルサプライチェーンが迅速に再編していることを示している。
情報筋によれば、この目標を達成するには、現在インドでのiPhone生産量を少なくとも2倍以上に増やす必要があるという。
ブルームバーグの報道によると、2025年3月期の会計年度までに、アップルがインドで組み立てたiPhoneの総額は220億ドルに達し、前年比で約6割増加した。現在、アップルのiPhone生産の約20%がインドで行われている。残りの大部分は依然として中国の工場に依存している。
アメリカ市場向けに年間6千万台以上を供給するため、アップルは主要な製造パートナーであるフォックスコン(Foxconn)やインドのタタ・エレクトロニクス(Tata Electronics)と協力し、生産能力の拡大を進めている。
アップルがサプライチェーンの移転に着手したのは、2022年に中国でコロナ・パンデミックが発生し、厳格なロックダウンを実施したことがきっかけだ。この影響で、フォックスコンの鄭州工場が一時操業停止に追い込まれ、iPhoneの生産量が大幅に減少した。
さらに、トランプ政権の発足後、中国製輸入品に対して最大145%の対等関税を課すことが発表され、アップルは生産拠点の移転を加速させることとなった。
今月上旬、スマートフォンやパソコンなどの電子製品は一時的に対等関税の対象から除外されたものの、中国に対する追加の20%フェンタニル関税は引き続き実施している。これはアップルがサプライチェーンの多様化を進める大きな要因となっている。
フォックスコンのインド南部にある工場は、同国におけるアップルの最大の生産拠点であり、タタ・グループもウィストロン(Wistron)やペガトロン(Pegatron)のインド事業を買収することで、アップルの重要なサプライヤーとなっている。
この移転は、インドのモディ政権からも強力な支援を受けている。インド政府は製造業への補助金や税制優遇を提供し、同国をグローバル製造拠点に育て上げることを目指している。
米中間の関税戦争が緩和傾向にある中、トランプ氏は中国共産党(中共)との交渉に前向きな姿勢を示している。しかし、アメリカにとって最大の経済的・軍事的ライバルである中共は、今後も厳しい圧力に直面する可能性が高い。
関税政策の変動や米中間の地政学的リスクの高まりを背景に、アップルはサプライチェーンの再構築を加速させ、インドを生産および輸出の戦略的拠点として強化している。
テクノロジー業界の調査会社フューチャラム・グループのCEO、ダニエル・ニューマン氏は「これは、アップルが成長と勢いを維持するための重要な一歩となるだろう。潤沢なリソースを持つ企業が、関税リスクに対してほぼ光速の速さで対応する姿を、私たちは目の当たりにしている」と指摘した。
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