中国市場に巣食う“騙しの文化”が、またしても暴かれた。
湖北省武漢市の生鮮市場で4月19日、市民が鮮魚を買ってその場で捌くのを拒み、持ち帰ろうとしたところ、店主らによって暴行される事件が発生した。
暴力被害に遭った市民は「鬼秤(イカサマ秤)」 など市場のイカサマ行為を暴いてきたブロガー「狂傲探店」とその同行者だ。後から魚の本当の目方を測るために、その場で魚を捌くことを拒んだ。
その魂胆がバレたのか、店主は一度は客の手に渡った魚を「その場で捌かないなら早く言ってくれ」と文句を言いながら、「別の魚に変えよう」と言って取り返そうとした。
ブロガーは店主の申し出を頑として拒否し続けた。すると、店主らは秤の重りを使って攻撃する暴挙に出た。店主らは「買うだけ買って捌かないなんて、あんた騒ぎを起こす気か」「武漢で魚を買ったらその場で捌くのがルールなんだよ」「殺すぞ」などと脅した。

重さをごまかす「鬼秤」の実態
「鬼秤」とは、見た目は普通の秤(はかり)だが、実際には内部が細工されており、実際の重さより多く表示される仕掛けのこと。たとえば1キロの商品を買ったつもりが、実際には800グラム程度しか入っていないのだ。
特に魚など海鮮を買う際に調理しやすいように内臓を処理し、一口大にカットしてくれる「捌きサービス」をしてくれる店も多いが、その際には客が選んだ活きの良い魚は、とっくに死んだ鮮度の落ちた魚へとすり替えられるケースも少なくない。
そうして客は知らない間に目方で損をし、鮮度でも損をする、そんなイカサマは中国各地の市場で蔓延している。

今回の事件では、ブロガーだけでなく、その同行者も店主によってスマホを奪われたうえ、耳から血を流すほどの暴力をうけた。
その後ブロガーは110番通報し、店主を訴えようともしたが、現地公安は店主をわずか12日の拘留処分に処しただけだという。
秤をめぐる騙し合いは、もはやほとんど日常茶飯事な出来事となっており、買う側も利口になった。なかには、秤を持参して市場へ行く人も現れている。
秤を持参できない場合でも、小細工されないように、すり替えられないようにと、客は売る側の一挙手一投足を見落とさないよう監視しようとするものだ。
多くの市場ではこうした乱れた現象をうけ、市場の一角に細工が施されていない普通の秤、「公平秤」を置いている。客は店から買った商品を公平秤でもう一度、重さを測って、騙されていないかどうかを確認し、重量が異なるようなことがあれば、関連部門へ苦情電話をかけられるようになっている。
店主が暴力に及んだ理由について、ネット上では「魚をその場で捌くのを拒まれると、店側が魚の目方をごまかしたことがバレる恐れがあったからだろう」「店主は客が選んだ活きの良い魚を死んだ魚へすり替えようとしていたのかもしれない」といった意見が噴出している。
市場に普遍的に存在するこうした「鬼秤」問題と、良心を失った市場商人の暴力体質に、強い批判が集まり、「よくあることだ。そういう店に出会ったら自身の運の悪さを認めるしかない」といった嘆く声も少なくない。

しかし、たとえ市場に「公平秤」が置かれようが、一部のモラルが低下した店主はそれでもイカサマをやめようとしない。その方法の1つが、内臓や骨などの不要物を取り除いたあと、食べられる部位だけを細かくカットして客に渡す「海鮮捌き」だ。処理後の商品を「公平秤」で再度計量しようが、真相は闇の中である。
「鬼秤だけならまだ許せるが、鬼秤に加えて鮮度の悪い商品にすり替えられるのは許せない」といった声もたくさん上がっており、このような市場に横行するイカサマに関する中国メディアの報道や市民投稿は中国のネット上にはあふれており、関連部門による「どうしたら鬼秤などに騙されないか」に関する対処法が上位表示されている。
それほど、中国の市場は信用が欠如している。いずれその信頼の崩壊は経済そのものにはね返ることになるだろうが、町での買い物一つでさえ、これほどまでに神経をすり減らさなければならないのかと嘆かわしいものだ。
悪いことだとわかっていても、利益につながるからとやってしまうのは、神の存在も因果応報も信じない人間がすることだと断言していいだろう。
実際、中国在住の筆者の友人の場合、市場に横行するそうした騙し食品や危険な食品に遭わないよう、消費する時は「神を信じ、自らを律する」信仰心をもつ店主の店へ行くようにしているのだ。
もちろん、人間である以上「間違い」や「有害だとは店主本人も知らなかった」といった可能性はゼロではないが、少なくとも「儲けるために意図的に嘘をつこう、相手を騙そう」などの点においては、信仰心ある人の倫理観は極めて高いと評価されているのが現実のようだ。
(中国市場の「鬼秤(イカサマ秤)」を暴く市民)
しかしもともと中国は儒教が生まれた土地であり、共産党が来るまでの中国においては、そうした行為は西洋諸国と同様、唾棄すべきものだとして捉えられていた。しかし共産党が政権を握ってから70年余りで、そうした道徳観念は破壊され、だんだんと薄れてきている。
「共産党についての九つの論評【第四評】共産党は宇宙に反する」には
次のように記している。
古来、人々は、努力すれば労働が報われ、勤勉であれば生活が豊かになると考え、それに憧れ、逆に、食いしん坊で怠け者であり、働かずして利益を得る者は悪辣であると考えてきた。ところが、共産党が疫病のごとく中国へ流れ込んでからは、社会のごろつきたちが、共産党の奨励の下、土地を分配し、財産を奪い、男をいじめ、女を横取りし、それらは全てが堂々たる合法的な行為となった。
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