中国ではここ数年、無差別襲撃や凶悪事件が目立って増加した。
その背景には、法制度への不信、生活の困窮、そして国家による抑圧が日常の中に潜む怒りと絶望を蓄積させたと専門家は指摘し、特に病院や公共施設での暴力事件は、人々の不満が抑えきれず社会の裂け目から吹き出している現象として、注目が集まった。
病院襲った患者の怒りの刃
4月28日深夜、天津市の大型総合病院「天津医院」で、医療関係者に対する患者の無差別襲撃事件が発生した。負傷した医師のなかには、容疑者の主治医のほか、居合わせた医師が次々と刺され、医師5人が重傷を負った。
エポックタイムズの情報筋によると、病院の患者である容疑者は、駱巍(らく ぎ)医師(整形外科の副主任)から手術を受けたが、期待した医療効果が得られなかったうえ、費用は予算を超えたため、容疑者は病院側が過剰に請求したと信じ、主治医を含む医師数人をナイフで刺したという。
駱巍医師は、刺されたケガで命を落とす可能性もあったとされており、同医師が担当する整形外科は、事件の後急遽休診となった。

事件後、現地の関連部門は、現場に訪れるなどして事件の情報封鎖を行い、ネット上に出回った市民の目撃情報や事件関連写真などは急速に削除され、当局は沈黙を保った。
この事件の背景には、医療制度への深刻な不信があるとみられ、不要な検査を繰り返されたり、保険適用外の費用を負担させられたなどの、中国の病院で横行する「患者への搾取」は有名な話だ。
エポックタイムズによる現地での取材に応じた市民も「そうした病院の腐敗した制度問題が、患者を追い詰めた」と指摘した。
今回の事件の容疑者も、多くの保険適用外の費用を自己負担せざるを得ず、医療費の支払いが滞っていたとの証言もあった。

中国各地で起こるこの種の突発的な暴力事件は、単なる個人の問題ではなく、社会全体に積もる不満と絶望の表れであり、今回の場合、刃は医師に向けられたが、その背後に流れる本質は、制度そのものへの報復だったのではないか?
多くの専門家が繰り返し警告してきたように「怒りの蓄積」は、いずれ社会そのものを揺るがす「破裂点」となりうる。国民の声なき叫びが抑え続けられる限り、こうした悲劇は繰り返されるということだ。
(取り押さえられた容疑者)
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