2025年1月からアメリカは、中国向け投資規制を強化し、国家安全保障の観点から規制の明確化を進めた。スコット・ベッセント財務長官は、投資判断を「信号機方式」で整理し、安全保障を最優先とする立場を明確にした。
5月7日、ベッセント財務長官は、米国議会において、中国への対外投資に関する新たな規則の策定について議員らと協議を重ねていることを説明し、投資活動の可否を明確に区別する必要性を強調した。彼は、投資判断の枠組みを「信号機」に例え、「赤信号」と「青信号」を基準にすべきであると述べた。
同日の公聴会では、過去に2人の連邦下院議員と行った議論を紹介した。「対外投資に関して、明確な方向性を示す赤信号または青信号を設定することの重要性について話し合った」と振り返り、「対外投資安全プログラムは、中華人民共和国(共産中国、PRC)が米国資本を利用して、国家安全保障を脅かすことを防ぐための重要な手段である」とベッセント長官は語った。
5月6日に行われた別の下院公聴会では、アメリカ資本の中国への流入を抑制する手段について議論が交わされた。ベッセント長官は、議会の立法において、柔軟性を持たせることの重要性に触れ、規則の「持続可能性」を確保する必要があると主張した。また、「この問題には微妙な判断が求められる」との見解も示した。
さらに7日、ベッセント長官は「投資家がこの新しいプログラムを理解し、順応できるよう取り組んでいる」と述べた。また、議会の協力に感謝の意を示した上で、「立法は重要かつ有益だが、成立にはもう少し時間が必要である」と説明した。
対米外国投資委員会(CFIUS)は長年、外国資本による米国資産の買収を調査し、安全保障上の懸念に対応してきたが、最近では対外資金の流れそのものに注目が集まり、特に対中投資の抑制を求める声が国内で強まっている。
ベッセント長官は「このプログラムは新たな国家安全保障の手段であり、中華人民共和国(共産中国)による米国資本の軍事利用を防ぐことが可能になる」と述べた。
対中投資規制の最新動向と背景
米中関係の緊張が高まる中、アメリカの与野党は、中国共産党が軍事用途を含む重要技術の優位性を追求する動きに対して、それを阻止する必要性で一致している。多くの投資家が中国への新規投資を減らすか、すでに停止した。
2025年1月には、バイデン政権下で対中投資禁止令が施行された。この禁止令は、アメリカ企業が中国の軍事関連企業とされる企業に対して、半導体、量子計算、人工知能の開発分野で投資を行った場合、民事・刑事責任を問う内容となっていた。
加えて、この規定では、アメリカの投資家に対し、十分なデューデリジェンス(適正評価)の実施を義務付けた。中国市場に参入する米国の投資ファンドは、投資先企業と拘束力のある契約を結び、違反の可能性を排除する措置を講じる必要がある。
2025年2月21日、現職のトランプ大統領は投資覚書に署名し、関係当局に対して、中国の敏感技術分野に対する新たな、あるいは拡大された投資制限の導入を指示した。
当時のホワイトハウス高官は、「北京は、アメリカの資本と知見を活用して軍事・情報・安全保障分野の近代化を進め、大量破壊兵器やサイバー攻撃によって、米国の安全保障に深刻な脅威を与えている」と警鐘を鳴らした。
トランプ大統領の覚書は、半導体、人工知能、量子技術、生物技術、極超音速、航空宇宙といった、中共の軍民融合戦略に関わる分野を対象とし、科学技術政策局に対して、関連産業の投資状況を定期的に見直すよう求めた。
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