■解説
今年初め、物議を醸している「子供をソーシャルメディアから守る法案(KOSMA)」が上院商業委員会を通過した。この法案の支持者は、13歳未満の子供をSNSから締め出し、17歳未満に対するアルゴリズムによる広告表示を制限することで、子供たちをオンライン上で保護できると主張している。一方、反対派は、この法律が子供たちの憲法で保障された言論の自由を制限し、ビッグテック企業による危険な個人データ収集を必要とする恐れがあると警告しています。
しかし、KOSMAの最大の問題は、その目的ではなく、その達成手段にある。子供たちの生活におけるソーシャルメディアの影響を減らすこと自体は良いことだが、政府主導の全面的な規制によってそれが実現できるとは期待できない。KOSMAは、子供たちがオンラインにいたいという欲求を止めることはできないし、テクノロジーに詳しい若者たちは、自分の望むものを手に入れる傾向がある。その代わりに、親は子供たちが再び現実の世界を望むように仕向ける必要があるのだ。
ソーシャルメディアがZ世代やアルファ世代に与える悪影響を否定できる人はほとんどいないだろう。私自身がその証人である。携帯電話がなかった時代をほとんど覚えていない私にとって、ポケットに入れているシリカとプラスチックの塊が、日々の生活を支配していることは明らかだ。休憩のたびにLinkedIn、Snapchat、Instagram、X、Reddit、YouTubeをチェックしたくなる衝動が有害であることは、十分に立証されている。最近では、誰もが少しずつ「脳を腐らせて」いるようなものだ。
そして、私たちの集中が続く時間とともに、ソーシャルメディアは「サードプレイス(第三の居場所)」も葬ってしまった。たとえば、シットコム『となりのサインフェルド』を思い出して欲しい。登場人物たちは仕事に行き、自宅で過ごすが、最も印象的な舞台はコーヒーショップだ。職場でもなく、自宅でもないこの場所は、彼らが日常的に訪れてコミュニティと交流する場だ。恋人と出会ったり、親密で対面型の交流の場所なのだ。
しかしZ世代以下にとって、サードプレイスという概念はもはや馴染みのないものだ。友達が何をしているかを知るために、地元のレストランに集まる必要なんてない。Instagramを見れば済むことだ。金曜の夜に誰かと出会うために、バーに行く必要はない。Hingeで「いいね」を追加購入すればOK。嬉しいニュースを友人と共有しても、返ってくるのはハイタッチやハグではなく、ただの「いいね」スタンプだ。
ソーシャルメディアによるサードプレイスの破壊は、多くの若者に孤独感をもたらした。KOSMAがこの問題に取り組もうとするのは正しいが、連邦レベルで画一的な禁止措置を講じるのは正しい方法ではない。批評家たちが指摘しているように、この法律は大規模な個人データ収集を必要とするか、あるいは全く実効性のないものとなるかのどちらかだろう。実際、たとえ厳格な年齢確認システムを導入したとしても、子供たちはその制限をかいくぐるはずだ。テクノロジーに関する鉄則とは、子供がアクセスしたいと思えば、必ずアクセスする、ということだ。
とはいえ、KOSMAが完全に無意味というわけではない。シグナルを伝えるのは重要だ。公的な人物がこれらのプラットフォームの危険性に注目を集めてくれるのは素晴らしいことだ。しかし、他のあらゆる分野と同様に、政府は親の代わりにはなれない。家族は民主主義の基盤であり、最も基本的な政治単位だ。ゆえに、サードプレイスを再生し、ソーシャルメディアを脇役へと追いやる責任は、家族にある。なぜなら、子供たちがSNSを使いたいと思えば、どんな規制があっても使ってしまうからだ。だからこそ、そもそも彼らが「使いたいと思わないようにする」必要がある。
子供たちを「コメント欄の荒らし」や「中身のないインフルエンサー信者」に育てたくない親は、子供たちにサードプレイスを見せる努力をすべきだ。放課後クラブやスポーツに参加させたり、教会のユースグループに誘ったり、毎週のゲームナイトを開いたりしてみよう。おそらく最も重要なのは、子供をソーシャルメディアから完全に締め出さないことだ。検閲しようとするとかえって注目を集めてしまう「ストライサンド効果」は実在するし、それは彼らの“ネット漬け”への欲求をますます煽るだけだ。
もちろん、これは家庭によって異なる形になるだろう。中には依存しやすい性格の子供もいれば、生まれつき家にいるのが好きな子供もいる。だからこそ、この問題を政府が、特に全国規模で法制化することはできない。人それぞれが異なる方法でサードプレイスにたどり着くのであり、KOSMAがすべての人にその道筋を効果的に示すことはできない。それは政府の官僚機構を拡大させ、複雑な社会問題への干渉を強めるだけだ。この問題に注目を集めるために、公職者が影響力を行使するのは良いことだが、今こそ親たちが立ち上がり、iPad漬けの子供たちを外に連れ出してネットから距離を置かせるべき時なのだ。
出典:RealClearWire
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