政府は5月13日、使用済み太陽光パネルのリサイクルを義務付ける法案について、今国会への提出を見送る方針を明らかにした。環境省と経済産業省が進めていた同法案は、太陽光パネルの製造者や輸入業者にリサイクル費用の負担を求める仕組みを盛り込む予定だったが、内閣法制局から他の関連法令との整合性や、既存パネルの費用負担のあり方について再検討を求められたため、提出が困難となった。
浅尾慶一郎環境相は同日の閣議後記者会見で、「太陽光パネルのリサイクルは喫緊の課題。可能な限り早期の法案提出を目指す」と述べ、今後も法案の内容を見直す考えを示した。
太陽光パネルは、東日本大震災後の再生可能エネルギー普及策を受けて国内で急速に導入が進み、2022年度末時点で累計導入量は約8,500万キロワットに達している。
導入されているパネルのメーカーを見ると、近年は中国やカナダなど海外メーカーのシェアが大きく伸びており、2024年の総販売量ではジンコソーラー(中国)が首位、次いでカナディアンソーラー(カナダ)、ロンジソーラー(中国)などが続いている。一方、住宅用では長州産業(日本)、ハンファジャパン(韓国系Qセルズ)、シャープ(日本)といった国内外のメーカーが上位を占めているが、全体としては海外メーカーの存在感が増している。
一方で、パネルの耐用年数は20~30年とされており、2000年代から設置された大量のパネルが2030年代に寿命を迎える見通しだ。環境省などの推計によれば、2030年代半ばから後半にかけて年間17~50万トン、場合によっては80万トンに及ぶ使用済みパネルが排出される可能性がある。
現状では、撤去された太陽光パネルの多くが最終処分場に埋め立てられている。今後は廃棄量の急増により、最終処分場の逼迫や有害物質の流出、不法投棄などの環境リスクが高まることが懸念されている。
政府はこうした問題に対応するため、太陽光パネルのリサイクルを義務化する法案を検討。法案の素案では、リサイクル費用をパネルの製造業者や輸入業者、解体費用を発電事業者が負担する仕組みを想定していた。しかし、自動車など他のリサイクル法制では所有者が費用を負担する例が多く、既存パネルの製造者にまで遡って費用負担を求めることや、費用負担の公平性について内閣法制局から指摘があった。
また、既設パネルの製造元が既に廃業している場合や、設置場所によって解体・運搬費用が大きく異なる点、建設資材として使われている場合の区別など、現場ごとの多様な事情も整理が必要とされている。
太陽光発電は温室効果ガス削減の切り札として普及が進む一方で、大量廃棄時代の到来を前に、リサイクル体制の整備が急務となっている。政府は今後、他のリサイクル法も参考にしつつ、事業者の費用負担の在り方や制度設計を見直し、早期の法案提出を目指す方針だ。
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