ロイター通信が関係者の話として報じたところによると、アメリカのエネルギー当局は、中国製の再生エネルギー機器が電力網の安全性に与えるリスクを改めて調査している。一部の中国製太陽光インバーターや蓄電池に、許可されていない通信部品が含まれていることが判明しており、電力網の安定性や安全性に影響を及ぼす可能性がある。
インバーターは、太陽光パネルや風力発電機を電力網につなぐ重要な機器である。現在、世界のほとんどのインバーターは中国企業が製造している。この機器は、蓄電池システム、ヒートポンプ、EVの充電設備など、さまざまな分野で使用されている。
インバーターは遠隔でメンテナンスや更新ができる設計であるが、アメリカの電力会社は通常、ファイアウォールを用いて、機器が中国のサーバーと直接通信しないよう対策している。しかし、一部の中国製インバーターには、仕様書に記載されていない「ゴースト通信機器」、例えばモバイル通信モジュールが見つかった。
ゴースト通信機器のリスク
これらの機器は、ファイアウォールを回避して遠隔で操作される可能性があり、電力網に問題を引き起こす恐れがある。過去9か月間、複数の中国製蓄電池でも同様の未申告の通信機器が発見された。
関係者によると、もしこれらの機器が悪意を持って操作されれば、大規模な停電や電力施設の破壊につながる可能性がある。現時点では、これらの部品がサイバー攻撃に使われた証拠はないが、その存在自体がリスクと見なされている。調査された機器の数や関与した中国メーカーの名前は公表されていない。
これらの機器が意図的に問題を起こすよう設計されたかどうかは不明だが、アメリカエネルギー省は、機器を購入する側がすべての機能を把握し、「ソフトウェア部品表(SBOM)」などを使って情報不足を補うべきだとしている。
アメリカ、脱中国依存と「信頼できる機器」の導入を加速化
米中関係が悪化する中、アメリカ政府は電力や通信などの重要インフラにおける中国メーカーの役割を見直している。米上院は2025年2月、「外国の敵対勢力への電池依存削減法案」を提案した。2027年10月以降、国土安全保障省が寧徳時代(CATL)やBYDなど6社の中国電池メーカーからの製品調達を禁止する計画だ。
これと並行して、アメリカの複数の電力会社が中国製インバーターへの依存を減らす動きを進めている。例えば、フロリダ州最大の電力供給会社であるフロリダ電力・照明会社(FPL)は、他国からの代替機器調達にシフトしている。
アメリカエネルギー省は、国内の製造能力を強化し、信頼できる機器を電力網システムに導入することで、サプライチェーンを強靭化させる取り組みを進めていると表明した。
各国が規制を強化し、潜在的脅威に対応する
現在、ヨーロッパでは200ギガワット以上の太陽光発電容量が中国製インバーターを使用しており、これは原子力発電所200基分の発電能力に相当する。専門家は、大量の機器が遠隔操作された場合、ヨーロッパの電力網に重大な影響を及ぼす可能性があると警告している。
ファーウェイは世界最大のインバーターサプライヤーであり、2022年の世界市場シェアは29%を占めた。陽光電源(Sungrow)や錦浪科技(Ginlong)がこれに続く。
ドイツの太陽光発電企業1Komma5°は、安全上の懸念からファーウェイ製インバーターの使用を全面的に停止したと発表した。
リトアニアやエストニアも潜在的リスクを認識している。リトアニアは2024年、100キロワット以上の再生可能エネルギー施設への中国からの遠隔アクセスを禁止する法律を可決した。エストニアの情報機関も、中国製技術の導入を制限しなければ、政治的圧力にさらされる恐れがあると警告している。
イギリス政府も現在、エネルギーシステムにおける中国技術の使用について包括的な調査を行っており、数か月以内に結果を公表する予定だ。
今後の課題
NATO当局者は、中国共産党が西側の重要インフラの支配を強めようとしているとして、各国に対し中国技術への「戦略的依存」の削減を求める警告を発している。
しかし、通信や半導体分野と比べ、エネルギー産業はセキュリティリスクへの対応が遅れている。特に、家庭用の太陽光発電や蓄電機器は規模が小さく、現在の安全審査の対象外であるが、電力網の供給構造に大きな影響を及ぼし始めている。
2024年11月、アメリカのインバーターメーカーSol-Arkと中国の徳業股份(Deye)との間で商業紛争が発生し、一部のインバーターが遠隔で停止された。この事件は、電力供給が外部から操作される現実的なリスクを浮き彫りにし、アメリカ政府の強い関心を引いた。これにより、各国は再生可能エネルギー技術における中国の役割を見直す動きを加速させている。
再生可能エネルギーへの世界的な需要が高まる中、各国はコスト削減と、インフラの安全性および技術的自立の確保という課題のバランスを取る必要がある。
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