5月14日、米移民・関税執行局(ICE)は、フィラデルフィア支部が5月7日に、中国国籍のフォンユン・シに対し強制送還命令を発し、中国へ送還したと発表した。フォンユン・シがドローンで軍事施設を無許可で撮影したとして、ICE首席法律顧問事務所は、彼を国家安全上のリスク人物に指定した。
フィラデルフィア現地事務所のブライアン・マクシェーン代理主任は、「フォンユン・シの送還は、ICEが米国市民の保護と国家安全の維持に、全力を尽くす姿勢を示した。彼の違法行為は、機密性の高い軍事施設に、重大なリスクをもたらした。送還により、彼が国家への脅威となる可能性が排除された」と述べた。
フォンユン・シは2021年8月11日、F-1学生ビザでサンフランシスコ国際空港から入国。ミネソタ大学の農業工学大学院生として在籍する期間中、ビザは有効だった。
2024年1月6日、シがバージニア州ノーフォークのニューポートニューズ造船所(米海軍関連施設)上空でドローンを使って撮影中、地元住民が当局に通報。連邦捜査局(FBI)が調査を開始し、ドローンのSDカードから米海軍の艦艇や関連する写真・動画が見つかった。
2024年1月18日、フォンユン・シはサンフランシスコで中国行きの便に搭乗する直前にFBIに逮捕された。1月25日、刑事訴追が未決の状態で米国務省は彼のF-1ビザを取り消し、2月7日にはミネソタ大学が彼の学生および交流訪問者プログラムの資格を終了した。
同年6月、フォンユン・シは、スパイ法違反の軽罪6件で起訴され、7月に2件(国防空域での軍事施設撮影の禁止違反、未登録の航空機を使用した重要軍事施設の撮影の禁止違反)を認めた。10月2日、バージニア州東部地区連邦地裁ニューポートニューズ支部はフォンユン・シに有罪判決を下し、6か月の禁錮刑を宣告。スパイ法に基づく第二次世界大戦時の規定により、釈放後1年間の裁判所監督が課された。
フォンユン・シはペンシルベニア州ホワイトディアの連邦矯正施設(FCI-ALS)に収監されていたが、2024年11月13日、フィラデルフィア緊急対応事務所(ERO)が移民拘留命令を発出した。2025年3月7日、同施設から釈放されると、EROは直ちに彼を逮捕し、ペンシルベニア州マケルハッテンのクリントン郡矯正施設に移送。同日、ICEは移民・国籍法第237条に基づき、強制送還の可能性を通知した。
3月24日、ニュージャージー州エリザベス市の移民裁判官がフォンユン・シの中国への強制送還を命じた。
LinkedInプロフィールによると、フォンユン・シは吉林大学を卒業し、中国国家電網で約1年半インターンとして勤務した。
日本・韓国での同様の事件
アメリカでの事件と同様、中国人による軍事施設の不法撮影が日本や韓国でも問題となった。
韓国では2024年6月以降、中国人観光客や留学生が軍事基地や空港など11件の無許可撮影事件を起こしたと国家情報院(NIS)が報告。例として、2025年3月、2人の中国人高校生がスウォン空軍基地近くで戦闘機を撮影し、デジタルカメラから数千枚の写真が押収された。彼らは「航空趣味」と主張したが、調査中に出国禁止となった。また、2024年6月には、釜山の海軍基地で米空母「セオドア・ルーズベルト」をドローンで撮影した中国人留学生3人が逮捕。携帯電話から軍事施設の写真500枚以上が見つかり、中共公安当局の連絡先も発見された。
日本では2024年5月、横須賀の海上自衛隊施設やヘリコプター搭載護衛艦「いずも」をドローンで撮影した動画が確認され、防衛相が中共によるスパイ行為の可能性を調査した。
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