2025年5月9日、経団連と国公私立大学の代表者で構成される「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」は、「科学技術立国に向けた国際的な研究者の交流促進に向けて」と題した要望書を政府に提出し、政府に対して大胆な政策転換を求めた。
要望書では、日本が資源に乏しい国であることを踏まえ、今後の経済成長には科学技術立国を目指すことが重要であると指摘。イノベーションを牽引する人材の育成や研究力の強化が不可欠であり、特に若手研究者が「お金と時間」の制約を受けずに研究に専念できる環境整備の必要性を強調している。具体的な提案として、科学研究費助成事業(科研費)の倍増など、研究費の大幅な増額を政府に求めている。
また、要望書はアメリカでの研究プロジェクトや大学助成金の削減についても言及している。アメリカでは2025年、トランプ政権による政府効率化政策の一環として、連邦政府機関の大規模な予算・人員削減が実施され、フルブライト奨学金など伝統的な奨学金プログラムの停止や、国立衛生研究所(NIH)による助成金削減、大学への助成金凍結などが相次いでいる。このような状況を受け、研究者がアメリカを離れる動きが広がっている。
英科学誌『ネイチャー』が2025年春に実施した調査では、アメリカの研究者約1600人のうち75%が「国外移動を検討している」と回答している。特に若手研究者(ポスドクや大学院生)でその傾向が顕著で、移住先としてはカナダやヨーロッパ、オーストラリアなどが挙げられている。また、実際にアメリカを離れた研究者の中には、中国出身者をはじめとした外国人研究者も多く含まれていると報じられている。
要望書は、こうした国際的な動向を踏まえ、日本が世界中の研究者にとって魅力ある研究環境を整備し、受け入れ体制を強化する必要性を訴えている。今後、政府による具体的な対応が注目される。


ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。