公益通報者への報復を抑止し、組織内の不正是正を目的とする改正公益通報者保護法が、2025年6月4日に参議院本会議で可決・成立した。新制度では通報者の保護が大幅に強化され、企業と通報者の双方に広範な影響を及ぼすとみられる。
改正法の柱となるのは、刑事罰の導入である。公益通報を理由に通報者を解雇または懲戒処分した場合、事業者には最大3千万円の罰金、処分を決定した個人には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金を科す。罰則規定は、法公布から1年半以内に施行される予定。
背景には、従来の制度では通報者が解雇などの不利益を受ける事例が後を絶たず、通報の萎縮を指摘してきた現状がある。刑事罰の導入により、企業側の抑止力向上が期待されている。一方で、企業側からは、虚偽通報の増加や不当な訴訟リスクに対する懸念が表明されており、制度の濫用防止が今後の課題となっている。
改正過程では、通報を理由とする「不当な配置転換」も処罰対象とすべきとの意見もあがったが、因果関係の立証が難しいとの理由から今回は見送った。
2022年の前回改正では、従業員301人以上の企業に内部通報窓口の設置や通報者の範囲拡大(1年以内の元従業員や取引先を含む)を義務付けた。今回の改正では、これらの体制整備義務がさらに強化され、違反企業には罰金を科す見通しとなっており、企業はコンプライアンス体制の再構築を急ぐ必要がある。
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