夜ごと窓を閉めても、毒のにおいが入り込む。咳き込みながら目覚めるのが日常だ。中国江西省・楽平(らくへい)市の住民は、20年にわたり「見捨てられた町」で生きてきた。
現地工業園の化学工場は有毒な廃水を河川に垂れ流している。その事実がSNSの映像と住民の証言により暴露された。
住宅地からわずか1キロメートル、最も近い家とは壁一枚で隔てられる化学工場だ。工場が隣接する町(名口鎮)では、「毎晩、腐った卵のような刺激臭に咳き込み、眠れない」と訴える声が絶えない。川には白い泡とともに死んだ魚が大量に浮かんでおり、飲用水も深刻に汚染されていた。
現地の医療関係者によると、病院に通うがん患者のうち「半数は楽平から来ている」という。住民の間でがん発症率が年々上昇しており、健康被害は地域全体に及んでいる。
この実態は、エポックタイムズの姉妹メディア・NTD新唐人テレビによる現地取材によって明らかになった。
過去には環境当局の調査で、鉄・マンガン・アンモニア性物質の濃度がそれぞれ基準の7.4倍、18.8倍、3.8倍に達していたことも判明した。だが現地政府は、「地元経済とイメージ低下」を懸念し、住民の告発に耳を貸そうとしない。
2015年には数千人の市民が抗議デモを行い、一時は官製メディアも問題を取り上げた。しかし、具体的な改善措置が講じられないまま、現在に至っている。王さんは「我々は『迷惑なクレーマー』と呼ばれ、陳情すれば報復を受け、環境局長からは「殺す」とまで脅されている」と訴えた。
誰もが知っているのに、誰も止めようとしない。行政の対応が進まない中、汚染の町で暮らす人だけが、今もなお代償を背負わされている。
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