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厚労省の臓器移植体制強化と国際的課題「中国との医療提携リスク」

2025/06/13
更新: 2025/06/13

厚生労働省は、臓器提供の現場で家族対応などを担う「臓器移植コーディネーター」に新たな認定制度を導入する方針を固めた。2025年6月11日に開かれた専門委員会でその案が示され、臓器提供を希望する患者の家族への説明や同意取得をより円滑に進めるための体制強化が目的である。

現在、脳死による臓器移植の現場では、日本臓器移植ネットワーク(JOT)のコーディネーターが中心となって家族への説明や同意取得を担ってきた。しかし、臓器提供の件数が増加する一方で、JOTのコーディネーターは全国で数十人と限られており、現場への派遣に時間がかかることが課題となっていた。

新たな制度では、各医療機関に所属する「院内コーディネーター」が、臓器提供に関する家族への説明や同意取得を行えるようにする。これにより、これまで数日かかっていた家族対応が迅速になり、臓器提供の手続きがより円滑に進むことが期待されている。

認定を受けるには、専門的な知識や経験を身につけるための研修や模擬面談などを受ける必要がある。研修を終えた院内コーディネーターは、日本移植ネットワークなどによって専門性が認定される仕組みとなる。今後は、院内コーディネーターが第三者的な視点を持ちつつ、家族の意思決定を支援できる体制を整える方針である。

厚生労働省は、今年度中の制度導入を目指している。

脳死からの臓器移植をめぐる実施体制見直しの経緯

1. 日本における脳死臓器移植の黎明期と停滞

1968年、札幌医大で日本初の心臓移植が行われたが、脳死判定や移植医療に対する社会的な不信感が強まり、その後長く移植医療は停滞した。

1980年、「角膜及び腎臓の移植に関する法律」が施行され、心停止後の角膜・腎臓移植は可能となったが、脳死下での臓器移植は認められなかった。

2. 臓器移植法の成立と初期運用(1997年~)

1997年、「臓器の移植に関する法律(臓器移植法)」が成立・施行され、脳死下での臓器提供が法的に可能となった。

ただし、脳死下での臓器提供には「本人の書面による意思表示」と「家族の承諾」が必須、かつ15歳未満は意思表示できず、子どもからの臓器提供は不可能という極めて厳格な条件が課されていた。

このため、脳死下の臓器提供件数は伸び悩み、多くの小児患者が海外での移植を余儀なくされた。

3. 国際的動向と法改正の流れ

2008年、国際移植学会による「イスタンブール宣言」で「移植が必要な患者の命は自国で救う努力をすること」が提唱され、日本でも法改正の機運が高まった。

2009年、改正臓器移植法が成立し、2010年7月17日に全面施行。

本人の意思が不明でも家族の承諾があれば脳死下の臓器提供が可能に。

15歳未満の子どもからの提供も可能となり、小児移植の道が開かれた。

親族への優先提供制度も導入。

改正法施行後、脳死下の臓器提供件数は約5倍に増加し、小児からの提供も実現した。

4. 近年の実施体制の課題と見直し

提供件数は増加傾向にあり、2024年度は脳死下での臓器提供が過去最多の139件となった。

しかし、医療機関の受け入れ体制や家族対応の遅れなどが理由で、提供や移植が見送られるケースも発生している。

厚生労働省は2024年7月から、移植実施体制の抜本的な見直しを検討。

5. 2024年以降の主な見直し内容

2024年12月、厚労省は、家族対応を担う臓器移植コーディネーターの派遣業務を新たな組織に移管し、家族対応の円滑化を目指す案を提示。

移植希望患者が複数の医療機関を選択できるよう指針を改正し、第一希望の医療機関で移植できない場合も他院で受けられるようにする。

医療機関ごとの待機患者数や実施件数の公表を進める。

知的障害者からの臓器提供についても、家族や関係者の推定意思に基づく提供の可能性を検討。

2025年6月には、家族対応を担う「臓器移植コーディネーター」の認定制度導入や、院内コーディネーターの拡充など、現場体制の強化策が専門委員会で示された。

6. 今後の展望

厚労省はパブリックコメントを経てガイドライン改正を進め、体制強化と地域格差解消、家族支援の充実を図る方針。

臓器提供施設の連携体制構築や人材育成も進められている。

中国との臓器移植分野での医療提携には重大なリスク

日本が臓器移植の体制を進めるにあたって、もっとも重大なリスクは「中国との医療提携」だ。

日本の厚生労働省の臓器移植に関する専門委員会は今回6月11日に開催された。6月11日とは、中国当局が「全国臓器提供の日」と定めた日だ。

そして中国では、本年の6月11日「全国臓器提供の日」に合わせて、1年前に不審死を遂げた若手医師・羅帥宇さんの事件が中国SNS上で再び注目を集めた。羅さんは湖南省の中南大学湘雅二医院で実習中、2024年5月に転落死。警察は自殺と発表したが、遺族は事件性を主張し、羅さんが3年かけて集めたA4用紙1119枚分の内部告発記録を公開した。

その記録には、ICU患者を意図的に“脳死”と見なして臓器を摘出する実態や、健康な児童が摘出対象となっていた疑惑、さらに学校の健康診断データを使った「臓器供給データベース化」の可能性まで記されていた。音声データには「健康な児童の臓器が高齢幹部に販売されていた」との証言も含まれている。

この事件は中国SNSで大きな波紋を呼び、多くのユーザーが真相解明を求めている。

中国では国家ぐるみで組織的な臓器収奪、すなわち自国で活動を禁止している気功修煉法の法輪功修煉者、宗教的少数派(ウイグル人イスラム教徒、チベット仏教徒、潜伏キリシタンなど)、反体制派などからの強制的な臓器摘出が長年にわたり行われてきたと、国際社会や複数の調査報告が指摘している。現在に至っては一般の中国国民や児童までもがターゲットになっている可能性が指摘されているのだ。

中国の臓器移植産業は「短期間で適合臓器が見つかる」「移植件数が極端に多い」など、他国では考えられない特徴を持ち、その供給源については深刻な人権侵害が疑われている。中国政府は死刑囚からの臓器摘出を認めてきたが、死刑囚の数だけでは膨大な移植件数を説明できず、法輪功修煉者や宗教的少数派、反体制派からの強制摘出が指摘されている。こうした行為は刑務所、警察、病院、軍、衛生管理部門が連携した「国家犯罪」とも評され、欧米各国の議会や国際機関で繰り返し非難決議が採択されている。

また、移植ツーリズムの目的地として中国を選ぶ患者が後を絶たず、日本人患者も含まれているが、こうした移植が「収奪された臓器」によるものである可能性が極めて高いとされている。日本国内でも、中国の臓器移植を仲介する業者の実態解明や、倫理的な観点からの法整備が求められている。

このような背景から、日本が中国と臓器移植分野で医療提携を進めることは、重大な人権侵害に加担する危険性があり、国際的な倫理基準や人権尊重の観点からも極めて慎重な対応が求められる。

▶EPOCH TIMES JAPAN編集長 ▶番組「日本の思想リーダーズ」ホスト ▶1969年東京生まれ ▶青山学院大学法学部卒 ▶総合商社日商岩井(現双日)にて情報産業等に約10年間従事。独立後紆余曲折を経て3年半ベトナムに渡る。帰国後1年間の無職期間中に日本各地を巡る。その後2015年からメディア業界へ。