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中国共産党とロサンゼルス暴動の関係

2025/06/15
更新: 2025/06/15

中国共産党(中共)と関係のある可能性がある共産主義系団体が、ロサンゼルスで発生した移民・関税執行局(ICE)に対する暴動の背後に関与しているとみられる。

この暴動は、単に左派の一部が反発した移民政策への突発的な抗議というよりも、何らかの組織が関与した計画的な動きの可能性がある。中には、中共の影響を受けた共産主義系団体とのつながりを指摘する声もある。

共産主義系団体がロサンゼルスの市民騒乱を革命の手段として利用しようとしたのは、今回が初めてではない。とりわけ、中国共産党系団体が政治的目的で混乱に関与した事例としてしばしば言及されるのが、1992年の「ロサンゼルス暴動(ロドニー・キング暴動)」である。

中共やキューバの共産主義思想、特に毛沢東主義の影響を受けた「アメリカ革命的共産党(RCP)」は、1992年のロサンゼルス暴動を組織拡大の好機と捉えていた。同党の機関紙『Revolutionary Worker(革命的労働者)』には、「この夏、L.A.へ――前線の革命戦士を募集」と題する見出しが掲載され、暴動の現場を革命運動の拠点とする意図がうかがえた。

1992年9月の『ロサンゼルス・タイムズ』紙の報道によれば、革命的共産党(RCP)の全国スポークスマンであるカール・ディックスは、同党の最終目標について「時が来れば、数百万人を率いて武装蜂起を起こすことだ」と述べていた。

また、同氏はロサンゼルス暴動への関与を「資本主義体制を打倒し、マルクス・レーニン・毛沢東主義に基づく社会へ移行するための準備段階」と位置づけており、党として暴動を革命運動の一環と明確に捉えていたことがうかがえる。

その後も革命的共産党は、トランプ政権に対して一貫して敵対的な立場を取り続けている。調査団体『Influence Watch(インフルエンス・ウォッチ)』によれば、2016年の大統領選後、革命的共産党のメンバーが中心となって「Refuse Fascism(ファシズムを拒否せよ)」という連帯団体を設立した。同団体は、トランプ氏の大統領就任阻止および政権退陣を掲げ、全国規模で抗議活動を継続的に展開してきた。

中共との思想的関連が指摘されてきた革命的共産党は、2025年の大統領就任式に際しても、SNS上で抗議デモへの参加を呼びかけ、トランプ大統領の2期目の出発に対する明確な反対姿勢を再び打ち出した。

反移民・関税執行局デモは、実質的に反トランプ運動の一環として機能しており、その主張や方向性は、マルクス主義系団体のイデオロギーとも一致しているように見える。

こうした思想的な共鳴は、現在のロサンゼルスでの暴動を支持・支援しているとされる、中国共産党と関係のある複数の共産主義系団体にも波及しているようだ。社会主義解放党(PSL)は、SNSを通じて「大規模動員」を呼びかけ、反移民・関税執行局抗議行動を積極的に後押ししてきたことで知られる。また報告によれば、暴動の最中に一部の抗議者が掲げていたプラカードやスローガンの一部は、PSLが提供したものであったとされている。

社会主義解放党は、毛沢東と彼の共産主義革命を称賛し、中共政権下の人権状況を擁護。また、1989年の天安門事件において、中共軍が平和的な民主化デモを行っていた学生たちを武力弾圧したという事実を否定している。

米紙『ニューヨーク・ポスト』の報道によれば、社会主義解放党の背後にある資金ネットワークには、中共に親和的とされる富豪ネヴィル・シンガム氏が資金提供する団体との重複が見られるという。特に、社会主義解放党と関係のある団体「ピープルズ・フォーラム(The People’s Forum)」には、シンガム氏の関連基金から数千万ドル規模の寄付が行われており、同フォーラムの人材と資金源が社会主義解放党と交差していることから、こうした構造を通じて中共との深いつながりがあると指摘する。

ニューヨーク・タイムズが2023年に行った調査報道によると、ネヴィル・シンガム氏は2017年、自身が創業したソフトウェア企業を7億8500万ドルで売却した後、現在は上海を拠点に活動しており、「中国を擁護し、そのプロパガンダを世界に広めるために多額の資金を投じている影響工作キャンペーン」の中心人物となっているという。

同報道によれば、ネヴィル・シンガム氏は自身が構築したネットワークを通じて、少なくとも2億7500万ドルをアメリカの非営利団体を経由して「進歩的な主張に中共のプロパガンダを織り交ぜる」世界各地の団体に配分しているとされる。

社会主義解放党の2024年大統領候補であったクラウディア・デ・ラ・クルスが設立した『ピープルズ・フォーラム(The People’s Forum)』は、ネヴィル・シンガム氏による資金提供の主要な窓口となっている。

さらに、調査機関ネットワーク・コンテイジョン研究所の報告によると、社会主義解放党の創設メンバーであるベン・ベッカーをはじめ、元同党候補のカーラ・レイエスおよびヤリ・オソリオは、ネヴィル・シンガム氏の支援を受けるメディア団体『ブレイクスルー・BT・メディア社』で指導的な役割を担っているとされる。

このような人事の重複を背景に、親中共派の実業家からロサンゼルス暴動を支援する団体への直接的な資金ルートを形成していると考えられている。

カリフォルニア州立大学ノースリッジ校やカリフォルニア大学バークレー校、サクラメント州立大学をはじめ、全米各地の大学で多くの学生が反ICEデモに参加しており、中共と反ICE運動との新たな関与の可能性が指摘されている。

アメリカの大学における中共の影響工作、特に親パレスチナ派の抗議活動に関連する事例はこれまでにも詳細に記録されており、こうしたキャンパスでの関与は極めて重要な意味を持つ。

中国共産党は統一戦線工作部の監督のもと、中国大使館や領事館から資金援助を受ける中国人学生学者連合会(CSSA)を通じて、全米の大学に広範なネットワークを構築してきた。

過去の事例としては、以下のような前例がある。
・2015年、習近平のワシントンDC訪問の際、中国大使館が学生に1人あたり20ドルを支払って動員した。

・2017年の中共党大会期間中には、UCバークレー、ハーバード大学、ジョージタウン大学などのCSSAが共同でイデオロギー宣伝を展開した。

・カリフォルニア大学サンディエゴ校やイリノイ大学では、一時的に中共の党支部を設置した。

これらの活動は、中共が北京の利益にかなう抗議活動に学生を動員し、大学キャンパスに組織的な基盤を築き、大使館を経由して活動を調整する能力を有していることを示している。

特にカリフォルニア州では、推定10万人の大学生が永住資格を持たずに生活しており、移民法の執行によって直接的な影響を受ける可能性があることから、こうした手法は国内の反ICE抗議運動に影響を与え、その拡大を促す潜在力を秘めている。

ロサンゼルス暴動と中共との関係、さらに学生主導の抗議運動に対する中共の関与は、外国勢力による影響工作に対するより広範な懸念を浮き彫りにしている。ダン・ニューハウス下院議員は昨年10月、「中共の悪意ある影響力工作は、アメリカの産業、雇用、国家安全保障に対する直接的な脅威である」と警告の声を上げた。

下院の中共に関する特別委員会は報告書の中で、「習近平が『魔法の武器』と称する統一戦線工作戦略を通じて、中国共産党は合法・非合法を問わずあらゆる手段を用い、アメリカ国民に影響を及ぼし、民主主義社会への干渉を試みている」と指摘している。

ロサンゼルス暴動は、中共の影響力工作が国内の不満を利用し、市民の不安を増幅させるだけでなく、イデオロギー的に連携した組織、大規模な資金ネットワーク、組織的な抗議活動を通じて、アメリカの法執行機関や大統領を弱体化させ得ることを示す懸念すべき事例である。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
経済学者、中国経済アナリスト。上海体育学院を卒業後、上海交通大学でMBAを取得。20年以上アジアに滞在し、各種国際メディアに寄稿している。主な著作に『「一帯一路」を超える:中国のグローバル経済拡張』(Beyond the Belt and Road: China's Global Economic Expansion)や『A Short Course on the Chinese Economy』など。