6月中旬以降、記録的な大雨とダムの事前予告無しの放流によって、湖南や広東の両省が壊滅的な洪水に見舞われた。被災者たちは、避難と生存に追われる一方、被災地では商店への略奪被害が起こっており、秩序の崩壊が目立つ。
内陸部・湖南省では、178か所のダムが放水、特に張家界市、湘西龍山県、桑植県では歴史的水位を超える洪水が発生した。多数の村落が孤立や水没、住民が2日以上救助を待ち続ける事態に陥った。時はちょうど受験の最中、一部では中学生たちが泳いで試験会場に向かうなど、地元住民の苦難が続いている。

6月19日、南部・広東省肇慶市では、洪水直後にスーパーマーケットが住民によって集団略奪される事件が発生した。店主によると、大勢の住民が店員の制止を無視して店内に押し寄せ、水に浸かった商品だけでなく、従業員が胸まで浸かりながら2階に避難させた無傷の商品まで奪い去ったという。さらに、レジ内の現金数千元(数万円)も盗まれ、店側の損失は次々と増えて膨らんだ。店員が撮影した映像には、子連れの女性や高齢者、子供までもが一斉に商品を持ち去る様子が映っており、「法不責衆(大勢なら罪に問われない)」と叫ぶ者までいた。略奪現場からわずか500メートルの場所に、警察の派出所があるにもかかわらず、警察は現れなかった。

(商店を襲う住民たち。2025年6月19日、広東省肇慶市)
被災地で停電・断水・通信遮断が続く中、政府の救援は届かず、多くの住民が自力で避難や生活再建を余儀なくされた。住民たちは「政府の放水事前警告はなかった」と憤り、SNSでは「これが“文明国”の姿か」と批判の声も広がっている。
政府は毎度のように「公式発表」を出しているが、その内容を信じる者は少ない。過去から一貫して被害を過小に見せ、情報を隠してきたため、「実際はもっと深刻だ」と考えるのが人々の共通認識となっている。結果として、被災地の実態は今なお不透明なままだ。
(湖南省の被災状況)
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