国土交通省は6月25日、日本郵便が全国で展開していたトラックなど約2500台を用いた一般貨物自動車運送事業の許可を取り消す行政処分を行った。これは、配達員に対する法令で定められた「点呼」(運転前後の酒気帯びや健康状態の確認)を長期間にわたり適切に実施していなかったことが原因である。今回の処分により、対象車両は今後5年間、運送事業に使用できなくなる。
日本郵便では、全国3188の郵便局のうち75%にあたる2391局で点呼の不備が確認され、点呼記録の改ざんや飲酒運転の事例も発覚した。国土交通省は、これを貨物自動車運送事業法違反と認定し、6月5日に処分案を通知。6月18日には聴聞の機会が設けられたが、日本郵便側は異議を申し立てず、正式な処分決定に至った。
今回の許可取り消しは、郵便事業の歴史でも極めて異例かつ最も重い行政処分である。日本郵便は、集配拠点間の輸送や都市部の大規模郵便局での荷物収集に約2500台のトラックやバンを使ってきたが、今後はこれらの車両を5年間使えなくなる。
一方、日本郵便が保有する約3万2千台の軽貨物車両(軽トラック)は、届け出制のため今回の処分の対象外となっている。しかし、国土交通省は軽貨物車両についても監査を継続しており、今後追加の行政処分が下される可能性がある。
日本郵便は、今回の処分による影響を最小限に抑えるため、子会社や外部の運送会社への委託、軽貨物車両の活用などで物流網の維持を図る方針を示している。しかし、ゆうパックや通常郵便などの配送に遅延が生じるリスクは避けられず、利用者や企業への影響が懸念されている。
千田哲也社長は「この結果を厳粛に受け止め、経営陣が先頭に立って再発防止策に取り組む」とコメントし、再発防止と信頼回復に努める姿勢を示した。
今回の事態を受け、国土交通省は日本郵便の子会社「日本郵便輸送」に対しても、安全確保のための体制整備や実施状況の定期報告を求めている。
今回の許可取り消し処分は、運送業界全体にも波紋を広げており、今後の日本郵便の対応と物流体制の再構築が注目される。
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