6月24日、中国南西部の貴州省榕江(ようこう)県は、30年に一度とされる記録的な洪水に見舞われた。市内の河川が同時に氾濫し、短時間で街全体が濁流に沈んだ。地下駐車場や商業施設は完全に水没。現地は事実上、機能不全に陥った。

被害の拡大要因として、上流の水力発電ダムによる事前警告無しの放流が重なったことも指摘され、地元住民によれば、水位はわずか30分で2階、旧市街では4階に達したという。SNSには「消防にも連絡が取れない」「親と連絡がつかない」との悲鳴が相次いだ。
(被災状況)
洪水の中、ネット上で大きな反響を呼んだのは、一匹の犬だ。救助隊が発見し、2度にわたり救助を試みたが、犬は頑として乗船を拒否。泥水の中に留まり、飼い主の帰りを静かに待ち続けた。その後、小舟を漕いできた飼い主により無事救出された姿が拡散され、「中国の忠犬ハチ公」として多くの共感を集めた。
(救助に戻った飼い主のボードに乗って避難する忠犬)
一方で、街の被害は壊滅的だった。洪水が引いた後も、厚さ10センチを超える泥が道路や建物を覆い、飲食店、商店、宿泊施設は営業停止。市内の大型ショッピングモールは、地下が完全に水没し、店舗が甚大な損害を被った。5月に開店したばかりのミルクティー店は、設備と在庫を全て失い、80万元(約1600万円)以上の損失を被った。
(被災状況)
6月26日11時時点、中共当局は、洪水による死者6人、被災者約3万人と公式発表した。しかし、現地住民の間では「被害は実際にはもっと深刻」「政府は被害の実態を隠している」との声が強い。停電、断水、通信障害が続く中、依然として連絡の取れない家族が多数存在する。

濁流の中で「必ず迎えに来る」と信じて救助を拒んだ白犬の姿は、多くの人々の心を打った。だが、この国の民衆には、「信じて待てる存在」が果たしているのだろうか。洪水が去った今、残されたのは泥と絶望、そして政府への深い不信だった。

(被災状況)
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