中国製モバイルバッテリーが、今や「爆弾」と化している。上海空港での発火事故、日本の民宿での爆発被害、そして続発する航空機内での発煙・発火トラブル。
背景には、中国製造業の安全軽視と、形骸化した認証制度の崩壊があった。いま、世界中の消費者が「目に見えない危険」と向き合わされている。

上海空港で発火
2024年10月20日、上海虹橋(こうきょう)空港の搭乗橋内で、乗客のリュックから突然煙が上がり、続いて数秒後には炎が噴き出した。密閉空間は一瞬で煙に包まれ、乗客らはパニックになったが、職員が消火器で消し止め、幸いけが人は出なかった。消防当局は「モバイルバッテリーの発火」が原因と断定した。
日本でも爆発被害
危険は中国国内だけにとどまらない。今年5月25日、日本を訪れていた中国人男性が持っていたROMOSS製モバイルバッテリーが、滞在先の民泊で爆発・発火。床が焼け焦げ、男性は民宿のオーナーから15万円の弁償を求められた。製品はわずか2か月前に購入したばかりだった。
今年6月以降、中国の大手メーカーAnkerとROMOSSは、発火や過熱の危険があるとして、200万台以上のモバイルバッテリーの大規模リコールを発表した。問題の原因は、電池の供給業者が不適切な原材料を使ったことによるという。だが宅配業者の多くは「運搬中の発火リスク」を理由に回収品の受け取りを拒否。消費者は「返品もできない」という八方ふさがりの状態に追い込まれた。
ROMOSSやAnkerのモバイルバッテリーは、リコールが発表される数か月前に、すでに安全認証「3C認証」が取り消されていたことが、中国メディアによって暴かれている。さらにUGREENやBaseusといった他の中国大手ブランドにも、同様の認証取り消しが相次いだ。
空の安全も直撃
地上だけではない。香港航空、南方航空、山東航空などの国内線では、モバイルバッテリーの発煙による緊急着陸や折り返し運航が続出。中国民用航空局は6月28日から「国家基準である安全認証3Cのマークがない、認証マークが不明瞭、またはリコール対象のモバイルバッテリー」の国内便機内持ち込みを全面禁止した。
(2025年5月31日、中国・南方航空の機内で、乗客が携行していたカメラ用バッテリーとモバイルバッテリーが発煙、離陸から15分後に緊急着陸を余儀なくされた)
エポックタイムズの取材に応じた広州白雲空港のセキュリティ検査員、馮(仮名)さんは、「モバイルバッテリーは安全上のリスクが極めて高い」と指摘、「ショートすると、短時間で400度以上まで過熱する。下手をすると周囲を巻き込んだ大火災になる」と警告した。

この一連の問題は、単なる製品不良にとどまらなかった。浙江科技大学の孫大康・公共安全研究員は「中国の製造業には安全より利益を優先する体質が染みついている。事故が起きてからの『後追い規制』では遅すぎる」と指摘した。
市民からは「モバイルバッテリーだけでなく、電動バイク、食品、ベビー用品など、中国製はどれも信用できない」との不信が渦巻く。
形だけの認証、緩すぎる監督、その代償は、今や世界の安全に燃え広がろうとしていた。
(北京地下鉄7号線の車内でモバイルバッテリーが爆発、2023年5月29日)
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