タイの憲法裁判所は7月1日、与党「タイ貢献党」のペートンタン・シナワトラ首相に対し、職務の一時停止を命じた。これは、外交上不適切とされる電話協議の発言を理由に、失職を求める訴訟が提起されたことを受けた判断である。
裁判所は同日、上院議員36人が首相の解職を求めた申し立てを受理し、審理期間中の権限行使が適切でないと判断。9人の判事のうち7人が賛成し、職務停止が決定された。これによりペートンタン氏は、今後15日以内に反論を提出する必要がある。
ペートンタン氏は、カンボジアのフン・セン前首相との電話協議中、タイ軍に対して否定的な発言を行ったとされており、これが憲法に定められた倫理規定に反すると判断された。政府関係者によれば、問題となった発言は録音され外部に流出していたという。
首相の職務は一時的にスリヤ副首相が代行する見通しである。
今回の決定は、ペートンタン政権の求心力低下に拍車をかける形となった。与党連立内でも亀裂が広がり、主要政党「ブムジャイタイ党」は連立離脱の方針を表明。一部野党は不信任案の提出も検討している。
政権支持率も急落しており、2024年3月時点で30.9%あったペートンタン氏の支持は、最新の世論調査で9.2%にまで低下。首都バンコクなどでは辞任を求める市民デモが連日発生している。
タイでは過去20年にわたり、首相の解任や軍の介入が繰り返され、政治の不安定化が続いてきた。今回の憲法裁の判断も、そうした文脈の中で新たな火種となる可能性がある。
今後の審理結果と、暫定政権の舵取りが注目される。
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