ルビオ米国務長官は1日、米国際開発庁(USAID)の対外援助業務を正式に終了すると発表した。今後は対象を絞り、援助よりも貿易・投資を優先する方針で、援助政策を大きく転換する。
ルビオ氏は声明で、アメリカは「慈善型援助」から脱却し、自助努力が可能な国を優先して支援すると述べた。この決定は、トランプ大統領の「政府のスリム化」政策の一環。
ルビオ氏は、「我々は自助の能力と意思を持つ国を優先し、資源を米民間企業や持続可能なグローバル投資の分野に振り向ける」と強調。新たなモデルは援助よりも貿易を優先するものだとした。また、この新モデルにより、アメリカは中国共産党との地政学的競争で優位に立てると付け加えた。
同氏は7月1日のブログ記事で、「数十年にわたり、アメリカの対外援助は期待された成果を上げず、不安定な情勢を悪化させ、反米感情を高めてきた」と指摘。「政府が認めてきた非効率な時代は終わりを告げる」と述べた。
トランプ米大統領は就任以来、数十億ドル規模の対外援助を凍結・削減し、アメリカ納税者の資金が「米国第一」の政策に合致する事業にのみ使われるよう取り組んできた。これによりUSAIDは活動停止に追い込まれ、多数の職員や契約業者が解雇され、食料や医療援助の提供に影響が出ている。
トランプ氏「他国が負担を増やすべき」
トランプ氏は、アメリカが対外援助に過大な費用を負担してきたとし、他の国々がより多くの責任を負うべきだと主張。USAIDの閉鎖について、「無駄、詐欺、乱用を根絶し、援助資金を実際の成果につなげるための再構築」と説明した。
アメリカ務省高官は、「USAIDの従来のモデルは他国によるアメリカへの依存を減らせなかった」と指摘。「我々は、パートナー国によるさらなる投資や共同出資を望んでいる。貿易協定、契約、協力協定といった形での貢献を期待している」と述べた。
USAID閉鎖への反応
USAIDは1961年にケネディ政権下で創設され、冷戦下の対ソ戦略の一翼を担ってきた。アメリカは世界最大の人道支援国であり、2024年には610億ドルの対外援助のうち、半分以上をUSAIDが実施していた。
閉鎖に対し、外交官団体や医療界からは強い懸念が相次いでいる。外交官を代表するアメリカ海外勤務協会は、「USAIDの閉鎖は拙速であり、建設的な対話を通じて解雇の影響を軽減すべきだった。信頼の再構築には数十年かかる」と批判した。
医学誌「ランセット」の研究では、USAIDの資金が特にアフリカなど中低所得国の公衆衛生改善に重要な役割を果たしてきたとされている。
AP通信によると、ブッシュ元大統領とオバマ元大統領はUSAID閉鎖を非難。両氏はUSAID職員との非公開ビデオ会議に参加した。民主党は閉鎖を「違憲かつ非人道的」と強く批判している。
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