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トランプ政権による世界貿易の再編 中共が焦燥する理由

2025/07/03
更新: 2025/07/03

アメリカと各国の貿易協定が広がる中、中国共産党(中共)政権は国際的な孤立と影響力の低下に対する危機感を募らせ、強硬な警告や対抗措置を相次いで打ち出している。グローバルなサプライチェーンの再編や関税措置の強化が中国経済に与える影響、そして各国の最新の動向について詳しく解説する。

トランプ米大統領が設けた各国に対する相互関税の猶予期限が7月9日に迫る中、中共はアメリカとの協定締結を模索する各国に対してけん制している。

米中間ではすでに貿易協定が成立しているが、中共は他国によるアメリカとの新たな協定締結を強く警戒している。アメリカと貿易協定を結ぶ国が増加するにつれ、中共は国際社会における孤立と影響力低下を実感し、焦燥感を募らせているとみられる。

中共が最も懸念しているのは、アメリカ主導による「中共排除型」のサプライチェーン構築が、単なる対中輸出規制にとどまらず、「信頼できる」貿易パートナーによる新たな国際秩序の形成へと発展し、中共体制下の中国が世界貿易の枠組みから次第に排除されていくという構図である。

中国製品の迂回輸出を警戒 中共への圧力強化

7月2日、トランプ大統領はベトナムとの貿易協定を発表し、ベトナム製品に20%の関税を適用する一方、ベトナム経由でアメリカに輸入される外国製品には40%の関税を課す方針を示した。ベトナム政府は市場の全面開放を承認し、アメリカ製品に対する関税をすべて撤廃した。

アメリカは中国製品が迂回したかたちでアメリカに入ってくる事例に対して取り締まりを強化しており、この姿勢は他国にも広がっている。韓国やマレーシアの税関当局も同様の対応を開始し、中国製品が第三国経由でアメリカ市場に流入する動きを阻止している。

ベトナム政府は企業に対し、原産地証明の厳格な管理を求めており、これは貿易紛争の回避と、アメリカが問題視する「原産地偽装」への対応を念頭に置いた措置である。過去には、中国製品がベトナムでラベルを貼り替え、「ベトナム製」と偽って関税を回避する事例も確認している。

今後、他国もアメリカの新たな制度への対応を迫られる局面は避けられそうにない。アメリカは関税制度を段階的に導入する方針を示しており、中国製部品を多く含む製品には、より高率の関税を課す姿勢を鮮明にしている。

ブルームバーグは、これはアメリカ・メキシコ・カナダ間の既存貿易協定(USMCA)の条項を参考に設計した制度であると、関係者の証言を引用して報じている。

こうした中、中共外交部と商務部は「中国の利益を犠牲にしてアメリカと減税協定を結ぶ国があれば、断固として対抗する」との立場を繰り返し表明している。このような強硬姿勢は、中共が「中国排除」サプライチェーン構想に対し強い不安を抱き、自国の世界貿易における影響力が周縁化されることを恐れていることの表れであると見ている。

欧州の対米接近と中共の警戒感

欧州のシンクタンク「欧州国際政治経済研究所」の代表ホースク・リー・マキヤマ氏は、中共による最近の声明はEUを意識したものであると指摘した。中共は欧州がアメリカ側に接近し、アメリカとの協定締結に動くことを強く懸念している。リー・マキヤマ氏は最近、北京で開かれた中共とEUの首脳会議に参加した。

米欧間の貿易交渉は現在、重要な転換点を迎えており、EU当局は最善のシナリオとして、7月9日の関税減免期限までに「政治合意」に達し、その後の協議で細部を詰めていく方針を示している。

EUの対米輸出額は対中輸出額の約2倍に達しており、この点でアメリカは交渉上、優位な立場にある。中共は、イギリスに続いてEUもアメリカと同様の貿易協定を締結することを警戒しており、とりわけその協定にサプライチェーンの安全保障、輸出管理、さらには鉄鋼・アルミニウム関税に関する条項が盛り込まれる可能性を強く懸念している。なお、イギリスはアメリカと最初に貿易協定を結んだ国である。

これら一連の動きが、中共の焦燥感をさらに高めている。

米英協定と中共の反発

フィナンシャル・タイムズ紙は、米英協定の条文自体には中共への直接的な言及はないものの、中共がこの協定を自身に対する挑戦と受け止め、異例のかたちで公式声明を通じて非難の意を表明したと報じている。

ワシントンのオルブライト・ストーンブリッジ・グループのパートナーで、在中国EU商工会議所の元会頭であるイェルク・ブトケ氏は、「中共はEUがイギリスのように輸出管理条項を受け入れることに懸念を抱いている。中共はEUに圧力をかけてそれを阻止しようとしているが、アメリカは受け入れさせる方向で動いている」と述べた。

日米交渉と中共の視線

また中共は、日米交渉についても対中政策も兼ねたサプライチェーン強化やレアアース輸出規制などを議題に含むことに対して強い警戒を示している。

日本政府がアメリカとの早期交渉を呼びかけた姿勢について、中共側は「恭順の意」を示したと見なし、アメリカが日本を優先的に取り扱うことによって中共に圧力を加える戦略があると分析している。

台湾の対応とアジアへの働きかけ

台湾は6月に中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)と半導体受託生産大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)を「エンティティリスト」に追加し、政府の許可なしに両社と現地企業が取引することを禁止した。

今年初めには、中共の党首が東南アジア諸国を歴訪し、「アジア大家族」としての団結を訴え、地域における貿易分断の動きを牽制しようとした。

林燕