イスラエル高官は、米軍と連携したイラン核施設空爆で高濃縮ウランが事前に移送されなかったと明言。核開発への影響や今後の動向が国際的な注目を集めている。
イスラエルの高官は、アメリカ軍が先月、イラン国内の三つの核施設を空爆し、重大な損害を与えたと指摘したうえで、イラン側はこれらの施設に高濃縮ウランを分散配置しており、空爆前に移送を実施できなかったとの認識を示した。一方で、地下深くに保管していた一部の高濃縮ウランは破壊を免れた可能性もあると述べた。
AP通信などの報道によれば、この高官は7月9日夜、ワシントンで開催されたブリーフィングにおいて、イスファハンの核施設に存在する深部の濃縮ウランについて「イラン当局が今後取り出す余地を残している」としながらも、その作業は極めて困難になるとの見通しを語った。
イスラエル当局は今回の攻撃によって、イランの核開発計画を約2年間後退させたと見積もり、また、イスファハン、フォルド、ナタンズの三施設に蓄積されていた濃縮ウランは、空爆前に移動されていなかったと結論づけた。現在、イスラエル側はイランが破壊を免れた核物質の取り出しを試みるか否かを注視し、警戒強化中だ。
この高官はさらに、イスラエル軍が長年にわたり、イランの核開発動向を継続的に監視してきた事実を強調した。ヒズボラ指導者ハッサン・ナスルッラが昨年9月に死亡して以降、イラン側は核兵器開発の加速を図ったと判断し、また、90%濃縮ウランを用いた核兵器の完成を視野に入れ、これをイエメンのフーシ派に供与し、イスラエルへの攻撃に使用させる構想さえ持っていたと述べた。
同高官は、イスラエル政府が関連情報をトランプ米大統領に提供したことも明らかにした。そのうえで、「アメリカが作戦を承認しようと関与しようと、イスラエルは単独でイランの核施設を攻撃する用意がある」と強調し、アメリカの支援は、イスラエルの決断にとって必須条件ではないと述べた。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相も同日、ワシントン訪問中にフォックス・ビジネス・ニュースのインタビューを受け、イランによる濃縮ウランの保有に依然として懸念を抱いていると語った。首相は「濃縮ウランは核爆弾を構成する一要素に過ぎず、それだけでは不十分だ」と説明し、「この構成要素が適切に管理される必要がある」と訴えた。また、「アメリカとイスラエルが一度行動を起こしたのであれば、二度目も三度目も可能であることをイランは理解している」とも強調した。
6月22日、米軍はGBU-57大型バンカーバスター(Massive Ordnance Penetrator, MOP)を用いてイランの核施設を攻撃した。この爆弾の開発を担当した米国防脅威削減局(DTRA)の高官は、爆弾が想定された深度に到達したかどうかを確認するためには、さらなるデータ収集が必要だと説明した。
イランのマスード・ペゼシュキアン大統領は7月7日、米保守派の元FOXニュース司会者であるタッカー・カールソン氏のインタビューに応じ、「空爆によって核施設は深刻な損害を受け、イランの技術者らはいまだに完全な現場確認を実施できていない」と述べた。
国際原子力機関(IAEA)は7月4日、イラン国会が新たに可決した協力禁止法の影響を受け、イラン常駐の査察官が安全確保のために撤収し、ウィーン本部に帰還したと発表した。テヘラン政権は、IAEAがアメリカおよびイスラエルに機密情報を漏洩したと非難し、両国による空爆を非難しなかった点についても強く批判した。
IAEAのラファエル・グロッシー事務局長は6月末、フォルド、ナタンズ、イスファハンの三施設において、濃縮・処理・転換の各能力が「重要なレベルで破壊された」と報告した。ただし、イラン政府が再開を望む場合、一定の核活動は復元可能であると警告した。また、損害の正確な評価には、イラン側が国際査察を再び許可するかどうかが決定的な要因になると強調した。
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