7月8日、アメリカ農業部は「国家農業安全行動計画」を発表し、中国を含む外国勢力による農地取得を全面的に禁止するという歴史的な政策転換を実行した。アメリカ政府は農業を国家安全保障の中核に据え、外国資本による土地取得や技術流出のリスクを徹底的に排除する方針を強化している。
この発表には、農業長官ブロック・ロリンズ氏、国防長官ヘグセス氏、司法長官パム・ボンディ氏、国土安全長官クリスティ・ノーム氏が連名で署名し、貿易顧問ナバロ氏も同席した。政府各部門の連携が図られ、包括的な国家行動として実行に移された。
中国資本のリスクとアメリカの警戒
アメリカ農業部の分析によれば、中国資本による農業用地の取得は2010年の1.4万エーカー未満から2020年には35.2万エーカーを超えるまでに急拡大し、10年間で5300%以上の増加率を記録した。2021年には38.4万エーカーに達したが、その後減少し、現在は約28万エーカーに落ち着いている。この数字は、外国の所有者が所有する農地全体の1%未満にすぎないが、その多くが米軍の戦略基地周辺に集中し、スパイ活動や監視行動の拠点となる恐れがある。
2024年6月20日の報道では、中国企業や個人が全米19カ所の軍事基地近隣に農地を保有している。たとえば、フォート・リバティは空挺部隊や特種作戦部隊の拠点であり、ペンデルトン基地には海兵隊の重要司令部が設置されている。中国側の地主がこれらの農地に偵察装置、追跡技術、レーダー、赤外線スキャナーなどを設置し、ドローンによる監視活動を展開する可能性が存在する。
専門家は、「中国共産党(中共)がアメリカの土地を掌握すれば、重要施設周辺に恒久的なスパイ気球の発信拠点を構築する余地が生じる」と警告した。国防長官のヘグセス氏も、戦略基地や軍事施設の周辺の土地が外国勢力に渡ることを国家安全保障上の深刻な脅威と明言した。
食料と農業の安全保障――テロ対策の最前線
この計画は、食料・農業分野を国家の「重要インフラ」として保護対象に明記した。2001年の9.11同時多発テロ後、米軍がアフガニスタンで押収した資料には、アメリカ農業を対象とするテロ計画や訓練マニュアルが含まれていた。広大な農地とリアルタイムで連結されたネットワーク、国際的な物流、最新技術への依存構造などが、アメリカの農業システムを外部からの攻撃に対して脆弱にしている。
中共が掲げる「超限戦」戦略は、軍事行動の範囲を越えてあらゆる手段を正当化し、国家を標的とする攻撃を構想している。米中間の戦略的対立が深まるなか、台湾有事や軍事衝突が現実化すれば、中共がアメリカ農業に対する破壊工作を仕掛ける可能性も否定できない。
相次ぐ中国人研究者の農業テロ未遂事件
最近、アメリカ司法当局は農業テロに直結する複数の事件を摘発している。今年6月3日には、中国人研究者2名が真菌「Fusarium graminearum」を密輸しようとした容疑で起訴された。この菌は、小麦・大麦・トウモロコシ・イネなどの作物に「穂腐病」を引き起こし、世界的に数十億ドル規模の経済損失をもたらす。さらに、人間や家畜にも健康被害を与える性質を持つ。
検察はこの事案を「農業テロ兵器の持ち込みを図った国家安全保障上の重大案件」と位置づけている。また、6月9日には、武漢出身の中国人研究者がアメリカのミシガン大学の研究室で用いる生物材料を偽って申告し、密輸を試みたとして訴追された。これらの事件は氷山の一角にすぎず、未発覚の事例が多数存在する可能性がある。
司法長官パム・ボンディ氏は、「農場の安全は国家の安全と不可分である。司法省はアメリカ農業を脅かす者を厳しく追及し、あらゆる違法脅威から農家を守る」と断言した。
中国資本による農地取得の戦略的意図とアメリカの反撃
2016年以降、中国からアメリカへの直接投資は減少した一方で、農地取得は急増した。アメリカ政府は、これを商業目的ではなく戦略的意図に基づく行動と見なしている。2022年以降、連邦および州レベルで中共による農地取得を制限・禁止する法案が相次ぎ、中国側の進出を大きく阻止する結果となった。
2023年5月、財務省は外国人による土地取得に対する規制を強化し、国家安全保障審査の対象として軍事施設8カ所を新たに追加した。これにより、対象施設から半径100マイル(約160キロ)以内での不動産取引は、アメリカ外国投資委員会(CFIUS)の監視下に置かれている。
また、同年7月25日には、米上院が中国・ロシア・北朝鮮・イランの関係者による農地取得を制限する修正案を可決し、2024年度国防権限法(NDAA)に組み込んだ。これにより、320エーカー以上、または500万ドル超の農地取引が対象となる。
州レベルで加速する中共規制
中共の土地取得を規制する動きは、州レベルでも加速している。2023年以降、全米39州と連邦議会で241本の関連法案が提出され、194本が中国人による不動産取得を直接禁止する内容を含んでいる。すでに24本の法案が可決され、アーカンソー州、フロリダ州、インディアナ州、ネブラスカ州、サウスダコタ州、ウェストバージニア州など7州において、中国人の土地取得が全面的に禁止された。
アメリカ農業の主権と安全保障を守る決意
「国家農業安全行動計画」はトランプ政権の主導で策定され、国民の広範な支持と現実的な危機認識に支えられている。農業部長ロリンズ氏は、「現在のアメリカ農業が直面するのは、単なる物価高騰や供給不足といった問題ではなく、国家主権と安全保障への直接的挑戦である。中国や他の敵対国に毅然と対応し、アメリカの土地も技術も決して譲らない」と語った。
アメリカは今、農業を国家防衛の最前線に据え、外国勢力による土地・技術流出の阻止と、農業基盤の防衛を本格化させた。今後、アメリカの農業政策と安全保障政策は、新たな局面に突入することになる。

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