東日本旅客鉄道(JR東日本)は、2026年3月から全エリアで運賃を平均7.1%引き上げる運賃改定を国土交通省に申請した。これは1987年の民営化以来、消費税増税に伴う改定などを除けば、運賃の本格的な値上げとして初めてとなる。
申請内容によると、改定率は全体で平均7.1%、内訳は普通運賃7.8%、通勤定期12.0%、通学定期4.9%の引き上げとなる。特に首都圏で従来より低廉だった「電車特定区間」や「山手線内」の運賃を「幹線」と一本化し、運賃水準を均一化することで、区分ごとの違いをなくし、利用者にとって分かりやすい体系を実現するとしている。ICカード運賃については、券売機きっぷより低いか同額となり(小児の一部区間を除く)、例えば幹線区間の初乗りIC運賃は現行147円から155円、きっぷは150円から160円へそれぞれ引き上げられる。
また、電車を長い距離利用する場合の運賃(1キロメートルあたりの単価)も上がる。たとえば、電車で11kmから300kmまで乗るとき、これまで1kmごとに16.2円だった運賃が、改定後は1kmごとに16.96円になる。つまり、今まで100km乗ると1,620円だったものが、値上げ後は1,696円になる計算である。
また、301kmから600kmまで乗る場合は、1kmごとの運賃が12.85円から13.45円に上がる。たとえば、400km乗る場合は、これまで5,140円だった運賃が、改定後は5,380円になるイメージだ。
このように、同じ距離でもこれまでより運賃の合計が上がることになる。運賃は実際には距離に応じて細かく計算されるが、長い距離になればなるほど1kmごとの運賃単価は少しずつ下がる仕組みだ。それでも、今回の値上げで全体的に支払う金額は増えることになる。
今回の運賃改定の主な背景には、テレワークの普及や人口減少による利用者数の減少、エネルギー価格と物価上昇の影響による経費増大がある。車両や設備の更新、バリアフリー対応、激甚化する自然災害への備えなど、安定的な鉄道サービスの維持に必要な資金を確保するため、経営努力を続ける一方で運賃改定は避けられないと判断された。
さらに、JR東日本は安全性・快適性・利便性向上にも重点的に投資していく方針だ。2026~2028年度の設備投資計画は年間約4,400億円を計画し、ホームドア設置や耐震強化、大規模都市駅の改良とバリアフリー整備、グリーン車導入推進、羽田空港アクセス線建設など、多岐にわたるプロジェクトを進めている。環境面では再生可能エネルギーや省エネ技術の導入で脱炭素社会の実現にも貢献を目指す。
なお、2026年3月実施予定の値上げ後も、オフピーク定期券や割安IC運賃、キャッシュレス・チケットレス推進、駅のバリアフリー化、障害者割引制度の拡充など、利用者サービス向上策は引き続き進められる。
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