中国貴州省貴陽市で8月11日、火鍋店を訪れた女性客・陳さんが、タレ皿の中でうごめく数匹のウジ虫を発見する騒ぎがあった。
あまりの光景に陳さんと同僚は吐き気を催し、席を立ってトイレへ駆け込んだ。席を立つ前に、陳さんはスマホでその様子を撮影することを忘れなかった。
その後、店主に苦情を伝えたが、態度は極めてそっけなく、「これはタンパク質だ」と開き直り、謝罪もなく100元(約2千円)の補償を提示して済ませようとしたという。

陳さんは納得できず、ウジ虫映像をSNSに投稿すると、「事件」は瞬く間に拡散され炎上。「タンパク質だというんなら自分で食べろ」「こんな衛生管理で営業を続けていいのか」「食安部門は早く動け」と批判が相次いだ。
地元メディアの取材に対し、陳さんは「私たちは何も賠償を求めていたわけではない。ただ、最低限の謝罪は必要ではないかと思ったが、それすらなかった」と語っている。

その後、記者が同行して問題の店を再訪すると、ようやく店長は陳さんに謝罪し、補償額も500元(約1万円)に引き上げられた。

これで幕引きとなった格好だが、ネット上では「同じような事件はまたすぐに繰り返されるのが目に見えている。高い確率で、またどこかで起きるだろう。これで終わってほしくない、きちんと改善してほしい」といった切実な声が寄せられている。
なぜ、中国ではこうした食品安全をめぐる事件は後を絶たないのか。被害者がSNSに投稿し、炎上してはトレンド入りし、メディアやセルフメディアがこぞって報道する。だが時が経てば忘れ去られ、またすぐ「次の事件」が起きるのが常であり、改善の兆しは全く見えてこない。
それでも、人々は毎回、考えざるを得ない。なぜこうも繰り返されるのか。農家が商売用の畑では有毒農薬を使い、家族用の畑では一切使わないという話は有名である。
自分さえ食べなければ他人がどうなろうと構わない、利益最優先、神を信じず因果応報も信じない、そして「みんなやっているから自分もやらないと損だ」という風潮。こうした価値観が根深く残る限り、この連鎖は断ち切れそうにない。
次に「タンパク質」が出されるのは、どこの店になるのか。


ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。