中国の若者の間で「大人用おしゃぶり」が異例の売れ行きを見せている。職場の不安や睡眠障害、口寂しさを理由に利用する人が急増し、通販サイトでは関連商品がランキング上位に並ぶ事態となっている。
SNS上には、大人がおしゃぶりをくわえてパソコン作業や就寝する動画があふれ、再生数はすでに2億回を超えた。27歳の女性は「仕事のストレスで使うと、まるで赤ん坊のころの安心感に戻れる」と体験を語り、ほかにも「不安や不眠のときに安らぎを得られる」「食欲抑制や禁煙に役立つ」といった声が投稿されている。
通販サイトでは10~80元(数百円~千円余り)の一般品から、キャラクター付きの高額商品まで幅広く売られ、月7千点以上を売り上げる店もあるという。中には「ストレス解消」「安眠効果」「禁煙サポート」「ダイエット効果」などをうたう商品も目立ち、値段は500元(約1万円)近い高級品まである。

しかしこの流行には、社会から皮肉と嘲笑が絶えない。「不安の原因はおしゃぶりがないからではなく、給料が低いからだろう」「次は紙おむつに戻るのか」と揶揄する声が相次ぎ、「少子化で需要が減ったおしゃぶりを大人向けに転用しているのではないか」との指摘もある。
市場拡大が続く一方で、専門家の中には「これは企業による商業的仕掛けに過ぎない」と冷ややかに見る者もおり、長期使用は歯並びや顎の健康に悪影響を及ぼす可能性があると警鐘を鳴らしている。
「大人が赤ん坊に戻る」という奇妙な流行の背景にあるのは何か──「孤独と不安」「現実逃避」などさまざまな声が出るなか、それでも若者たちは手探りで安らぎを求めている。

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