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独最大の中共スパイ事件 AfD元議員スタッフに懲役7年半求刑

2025/09/17
更新: 2025/09/17

ドイツで過去最大規模とされる中国共産党(中共)のスパイ事件の公判が9月16日、ドレスデン高等地方裁判所で開かれた。連邦検察は、元「ドイツのための選択肢(AfD)」欧州議員の事務所スタッフだった郭建被告が20年以上にわたり中共情報機関のために活動し、法輪功学習者の監視や欧州議会の動向報告などに関与していたと指摘。懲役7年半を求刑した。

長期にわたる監視と証拠提示

法廷ではまず、被告らのチャット記録やファイル送信の履歴などを証拠として提出した。続いてファビアン・シェルハース検察官が約2時間の論告を行い、郭建が少なくとも20年間にわたり中共情報機関のためにスパイ活動を行い、EU、ドイツ政府、政党、さらには中共から迫害を受けている海外在住者らを計画的に監視していたと指摘。その行為は極めて悪質であると断じた。

検察によると、憲法擁護庁は2年半にわたり郭建を監視し、携帯電話やパソコン、メールを押さえ、自動車には盗聴器を設置していた。監視措置はいずれも内務省と連邦議会のG10委員会の承認を得て実施し、繰り返し延長してきたという。

シェルハース検察官は、郭建について「多才なスパイ」と評した。郭はドイツの政党「ドイツのための選択肢(AfD)」のマクシミリアン・クラ欧州議会議員の事務所でスタッフを務めた経歴があり、諜報の技術に長けていたという。郭自身も長年の活動歴を誇っていたとされる。

共犯のYaqi X.はライプツィヒ/ハレ空港の物流会社PortGround GmbHに勤務していたが、常に郭の指示に従っていた。検察は「彼女は遅くとも2022年4月の時点で郭が中共のスパイだと知っており、それを承知で軍事情報などを郭に渡していた」と述べた。

ドイツ国籍取得後もスパイ活動

郭建は2011年にドイツ国籍を取得していたが、にもかかわらず、一貫して中共のために働き続けていた。

中共に反対する人物の情報を収集していた。傍受された通話記録の中には、中共の高官とのやりとりも含まれており、その内容には欧州議会が2024年1月に採択した「法輪功迫害の即時停止を求める決議」に関する情報が含まれていた。

この決議には特に法輪功学習者の丁元徳さんの事件が盛り込まれていた。丁さんの息子、丁楽斌さんはベルリン在住で、父が法輪功を修煉することを理由に中共に不当に拘束されたと知ると、釈放を求める様々な運動を展開した。欧州議会は決議案で丁元徳さんを含む法輪功学習者の即時無条件釈放を求めたが、郭建はこの決議の進展を詳細に中共に報告し、採択を妨害しようと試みていた。

検察の求刑と過去の事例

検察は郭建に懲役7年半、Yaqi X.に懲役2年9か月を求刑。両名は逃亡の恐れがあるとして、判決後すぐに服役を開始すべきだと主張した。郭建はすでに1年5か月、Yaqi X.は1年勾留されている。

ドイツの刑法では、スパイ罪はその重大性や被害の程度によって量刑が決まり、通常は1年以上15年以下、または終身刑に処される。国家機密漏洩罪にあたる場合は6か月から5年、重大な場合は1~10年の刑となる。

過去の事例としては、2022年のクラウス・ランゲ事件で、政治学者でシンクタンク代表だったランゲが2010年以降、中共情報機関のためにドイツの政治・経済・軍事情報を収集し、中共大使館に渡していたとしている。2年の執行猶予付き判決を受けた。これはドイツで初めて中共スパイとして公判で有罪となった事例である。

また2021年には独中二重国籍の人物が軍事技術を流したとして懲役3年6か月の判決を受けている。

今後の見通し

近年、ドイツは中共スパイ活動の取り締まりを強化しているが、公開される判決の詳細は依然少ない。連邦検察庁によると、中国関連のスパイ事件は増加傾向にあり、量刑は一般的な経済スパイ事件より重いが、ロシアやイラン関連の深刻事件ほどではないという。

今回の裁判は9月末に残り2回の審理を経て最終判決を迎える見通しだ。量刑は今後の中共スパイ事件に対する「風向き」を示す可能性が高い。

王亦笑