米CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は9月23日、近年アメリカで危険な薬剤耐性菌の一種であるNDM産生カルバペネム耐性腸内細菌(NDM-CRE)が急増していると警告した。この菌は強力な抗生物質のカルバペネムに耐性を示し、治療の選択肢が非常に限られるという。
NDM-CREは感染力が強く致死率も高いため、「悪夢の細菌」と呼ばれている。2019年から2023年にかけて米国内での感染件数は460%以上増加した。
NDM-CRE感染は肺炎、髄膜炎、創傷感染症、尿路感染症、血流感染症など多岐にわたり、長く抗生物質を使用している患者や免疫力が低い患者、人工呼吸器やカテーテル利用者が特に感染リスクが高いが、健康な人は通常感染しない。
米CDCは多くの医療機関でNDM-CRE検査体制が不十分なことが感染検出の遅れにつながっていると指摘し、手洗いや消毒、手袋着用など感染防止対策の徹底を呼びかけている。
治療は難しく、適切な検査と抗生物質選択が不可欠だが、医療提供者の耐性機構の理解不足も懸念されている。米CDCの専門家は、治療の複雑化に対応するため検査アクセスの向上を強調している。
薬剤耐性菌の急増は米国だけでなく世界的な問題で、欧州でも多剤耐性真菌の感染拡大が警告されている。また、抗生物質の過剰使用が耐性菌増加の主因となっている。
米国では毎年280万件以上の耐性感染が発生し、3万5千人以上が死亡している。抗菌薬耐性は医療、農業、獣医分野にも影響を及ぼし、世界でも最も緊急性の高い公衆衛生課題の一つとなっている。
日本の厚生労働省の感染症発生動向調査では、NDM-CRE感染症は2014年から5類感染症として全数把握されており、毎年2千例前後の報告がある。特に2020年以降、NDM型検出株の増加が顕著で、海外渡航歴のない国内感染例も増えている。下水からもNDM型を保有する大腸菌が検出されており、国内での伝播拡大が推察されている。
感染症の検査や耐性遺伝子の検出も進んでおり、IMP型が日本では多い中で、NDM型の出現も確認されている。東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県などで多く報告されている。
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