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中国の自動運転企業 米国市場での事業展開が難航 欧州市場へ進出加速 

2025/10/08
更新: 2025/10/08

中国の自動運転関連企業は、アメリカ市場での事業展開が難航したことを受け、現在はヨーロッパ市場への進出を加速させている。ロイター通信が10月6日に報じたところによると、複数の中国企業がヨーロッパに本社を構え、データ共有協定を締結し、現地での道路テストを進める動きを強めており、こうした流れが安全性や公平な競争環境に対する懸念を呼び起こしているという。

中国国内では、新車販売台数の半数以上が自動運転機能を搭載しており、中国共産党(中共)当局は自動運転分野で世界的な主導権を握ることを目指している。国家政策として技術開発のロードマップも策定されており、複数の業界関係者によると、ヨーロッパは中国の自動運転企業が海外へ事業を広げるための「橋頭堡(きょうとうほ・不利な地理的条件での戦闘を有利に運ぶための前進拠点)」になりつつあり、そのモデルはEV車の展開戦略と非常によく似ているということだ。

北京のスタートアップ企業「軽舟智航(QCraft)」の最高技術責任者、董理氏は、先月のミュンヘン・モーターショーで新たにドイツに本社を設立すると発表した。董氏は「アメリカ市場には『壁』がある」と述べ、これは国家安全保障を理由としたデータ規制を指すと説明している。

また、中国の自動運転技術開発企業「元戎啟行(Deeproute.ai)」は、中国および欧州の自動車メーカーと提携し、ヨーロッパにデータセンターを開設する計画を進めている。

自動運転開発企業の「Momenta」は、すでにトヨタやゼネラル・モーターズ(GM)に自動運転システムを提供しており、来年にはドイツでレベル4の自動運転走行試験を行う予定だ。事情に詳しい関係者によると、Momentaは「ヨーロッパを主要市場と見据えている」としている。

コンサルティング会社アリックスパートナーズ(AlixPartners)の顧問、張瑩氏は、文遠知行(WeRide)、百度(Baidu)、小馬智行(pony.ai)なども欧州市場で積極的に事業を展開していると指摘している。

張氏は、中国市場は競争が激しく利益率も低いため、各社はヨーロッパ進出によって新たな成長機会を模索しており、「投資家たちは、この動きによるリターンを期待している」と述べた。

一方で、ヨーロッパの競合企業がすべてこの流れを歓迎しているわけではない。イギリスのフュージョン・プロセッシング(Fusion Processing)の最高経営責任者(CEO)、ジム・ハッチンソン氏は、欧州各国政府に対し、国家安全保障や市場操作のリスクを防ぐための監督体制強化を求めた。ハッチンソン氏は、「ヨーロッパがこうした技術を発展させるのであれば、公平な競争を維持するために、より厳格な規制と一定の政府関与が必要だ」と話している。

調査会社カナリス(Canalys)の推計では、今年、中国では約1500万台のレベル2の自動運転車が販売される見込みで、市場全体の6割以上を占めるとされている。一方、ヨーロッパの多くの国では、こうしたシステムは依然として高級車に限られている。

シノ・オート・インサイツ(Sino Auto Insights)の創業者、塗楽氏は、アメリカはすでに中国のコネクテッドカー(インターネット への常時接続機能を具備した 自動車)技術への規制を強化し、封じ込めを行っていると述べた。一方、ヨーロッパの規制は比較的緩やかであると指摘し「ヨーロッパは、中国企業が進出可能な唯一の大規模市場であり、だからこそ今のうちに機会をつかむ必要がある」と述べた。

また、EUのウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は3日、ヨーロッパ全体で自動運転技術の開発を推進する必要性を強調し、「この技術はすでにアメリカと中国で現実のものとなっており、ヨーロッパも同じようになるべきだ」と呼びかけた。