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中国製化学品がアジアの覚醒剤氾濫を後押し 深刻化する薬物危機

2025/11/12
更新: 2025/11/12

米ワシントン・ポストの調査によると、中国の化学メーカーが覚醒剤(メタンフェタミン)の製造に使われる前駆体化学品を東南アジアの無政府地帯に大量に輸出しており、現地の武装勢力や犯罪組織が過去最大規模で覚醒剤を製造・密売していることが明らかになった。これにより、アジア太平洋地域での薬物危機が一層深刻化しているといいう。

タイの麻薬取締当局は最近、米国麻薬取締局(DEA)の協力を受け、中国から出荷された化学品を押収した。これらの化学品は当初、バンコク周辺へ運ばれる予定とされていたが、実際には北上し、ミャンマー国境へ向かっていたことを確認している。タイ当局によると、押収された化学品は「前駆物質」と呼ばれ、覚醒剤の主な原料として使用されるものだという。

国境の向こう側にあるミャンマー東部のシャン州は、国連薬物・犯罪事務所(UNODC)が「世界の覚醒剤生産の中心地」と位置づける地域だ。複数の武装勢力や犯罪組織がひしめいているが、その中でも最大勢力はワ州連合軍(UWSA)であり、アメリカは同組織を中国共産党(中共)の支援を受けた地域代理人とみなしている。

ワシントン・ポストが入手した資料によると、多くの中国の化学企業が電子商取引サイト上で、覚醒剤製造に使える前駆体化学品を公然と販売しており、税関検査を回避する「ワンストップ」型の物流支援まで提供しているという。

仮に摘発されても、中共当局による処罰は軽微にとどまるのが実情だ。さらに資料では、こうした違法取引が拡大を続ける背景として、中国当局が国際的な規制基準を満たしておらず、薬物流通の抑止に十分な対策を講じていないことや、他国政府からの是正要請を無視し、中国の巨大な化学産業に根を張る犯罪勢力を放置している点も指摘している。

東南アジアに駐在するアメリカの法執行当局者によると、最新の情報では「アジアに覚醒剤、そしてアメリカ本土にフェンタニルを供給しているのは、いずれも同じ中国の化学企業群だ」ということが明らかになっている。

では、なぜ中国の化学企業はためらいなく前駆体化学品を大量に輸出しているのか。

豪州在住の法学者・袁紅冰氏
「トランプ政権の一期目の時、アメリカは中共に対してフェンタニル関連の化学品の問題を繰り返し提起したが、結局解決しなかった。根本的な理由は、習近平の指示にある。習は『かつて西洋列強が清朝にアヘンを流入させ、毒薬で国防力を破壊した。今や形勢は逆転し、アメリカ社会の問題が薬物氾濫を引き起こしている。これは東の隆盛・西の衰退の表れであり、我々の責任ではない』と指示したという。そのため、フェンタニル問題、すなわち中国からの薬物流出問題の根本的な解決は望めないのだ」

袁紅冰氏はさらに、中共が監督しているどころか、前駆体化学品の輸出を国家戦略の一部として扱っていると指摘した。

袁紅冰氏
「2019年の時点で、習近平主導の中共当局は、麻薬製造に使われる前段階化学品の生産と特定地域への輸送を国家の基本戦略とする決定を下した。具体的な対象はオーストラリア、アメリカ、ヨーロッパだった」

国連薬物犯罪事務所(UNODC)の報告書によると、昨年、東南アジアおよび東アジアで押収された覚醒剤は過去最多の236トンに達し、前年比24%増となった。主な供給源はミャンマーのシャン州で、現地の武装勢力と中国側との間には「薬物を中国国内に逆流させない」という厳しい取り決めが存在するという。

台湾国防安全研究院の副研究員・謝沛学氏
「ワ州(ミャンマー)連合軍は単なる犯罪組織ではなく、実際にはミャンマーにおける中共の重要な戦略代理人だ。中共はミャンマーに数十億ドル(数千億円)規模の投資を行っている。中・ミャンマー経済回廊、チャウピューの石油・天然ガスパイプライン、銅鉱山開発などは、いずれもワ州連合軍の勢力範囲と密接に関係している」

「中共はワ州連合軍を支援することで、これらの投資や経済回廊の実質的な支配を確保しているのだ。こうした背景から『薬物を中国国内に還流させない』という暗黙の合意がある限り、中共はワ州連合軍による薬物の生産や密売を容認しているのである」

ワシントン・ポストは報道では、タイ当局者の次の言葉を引用している。「問題が中国にあることは誰もが知っている。しかし、私たちは小国であり、北京に輸出規制を求めることはできない」

謝沛学氏
「経済・外交・軍事などあらゆる面で、小国単独では中国を止める力がない。中国は覚醒剤やフェンタニルの原料を輸出し、周辺国に被害を押し付けている。アメリカのような大国でさえ、過去数年間にわたり中国に厳格な輸出管理を求め続けてきた。しかし、返ってきたのは中共の形だけの対応だった」

専門家らは、中共が「規制対象外だが転用可能」な化学品に対して緩い姿勢を続ける限り、アジアにおける麻薬の製造は止まらないと警告している。