中共インフルエンサー買収暴露!「見えないプロバイダー」戦略の全貌と台湾心理戦

2025/12/29
更新: 2025/12/29

海外軍事インフルエンサー「説真話的徐某人」が暴露した中共の衝撃作戦。 月4万ユーロでインフルエンサーを買収し、「見えないプロバイダー」戦略で台湾の士気を削ぐ。専門家が解く巧妙な心理戦の手口と防御法を徹底解説。

インフルエンサー「説真話的徐某人」(徐某人が語る真実)がこのほど録音音声を公開し、中国のインフルエンサー「落日海盗」から中共のプロバイダー要員として勧誘を受けたと暴露した。

提示された報酬は月額4万ユーロ(約690万円)に上る。高額な提案の背後には、中共が進める国際的な情報戦略の変化があると専門家は指摘する。

SNS「見えない」勧誘網の仕組み

音声によると、「落日海盗」は自らを中共軍部とつながる仲介者だと名乗り、かつて北京市公安局で情報関連の任務に従事していたと述べている。彼は日本やイタリア、米国などで、音楽・観光・グルメ・自動車といった幅広いジャンルのインフルエンサーを取り込み、「中国の良さを伝える発信をしてほしい」と依頼してきたという。

「落日海盗」が標的にした徐氏は、これまで台湾防衛をテーマにした番組を制作しており、軍事に詳しい人物として知られる。その影響力を利用し、「台湾の防衛体制の弱点を冷静に語る中立的立場」を装う形で、台湾社会の士気を下げることが狙いだったとみられる。提示された手口は、「あからさまな宣伝ではなく、自然に印象を変えていく」という、いわば“静かな世論操作”である。

歴史談義に潜む親中偏向の実態

カナダ・ヨーク大学の沈栄欽副教授によれば、この事例で「落日海盗」が名を挙げた「小島大浪吹」というチャンネルにも目を向けるべきだという。一見すると、このチャンネルでは大躍進期の犠牲者や毛沢東の権力闘争、チベット統治など、中国ではタブーとされるテーマを自由に扱っている。

だが沈氏は「台湾に関連する話題になると、突然論調が偏る」と指摘する。日本経済の弱点を繰り返し批判しつつ、中国体制の欠陥には一切触れない――その露骨な“片寄り”が見え隠れするのだ。表面上は中立を装っていても、実際には親中的視点に誘導する仕組みが組み込まれている。

このような「非政府的に見える語り手」を用いることこそ、中共が現在とっている新しいプロバイダーのやり方だといえる。

他人の口を借りる新プロパガンダ手法

台湾安全保障協会の何澄輝副事務局長は、この現象を「他人の口を借りて語らせる」新しいプロバイダー手法だと説明する。

かつて中共は官営メディアを通じてプロバイダーを行ってきたが、それらは容易に識別され、国際的な影響力を発揮できなくなっている。近年は、関係が曖昧で中共色の薄い個人や団体を表舞台に立たせるやり方が台頭しているという。かつて西洋人を雇って親中的発言をさせていた「洋五毛」から、今は海外華人を中心とした“新たな代弁者層”へと対象が移っている。

何氏は「外見上は独立して見える語り手ほど、人々の信頼を得やすい。こうした構造が中共に都合よく利用されている」と分析する。

「中立」装った台湾向け心理戦

「落日海盗」は音声の中で「台湾を客観的に分析するだけで、人々の戦意を削げる」と語っていた。

何氏は「これは中共が自らの軍事力を過信している証拠であり、民主国家の市民の判断力を軽視している」と指摘する。

ウクライナ問題を持ち出し、「台湾も同じ結末を迎える」といった論調を誘導しようとするのも同じ構図である。しかし何氏は「本当に公平な分析であれば、損をするのは台湾ではなく中共自身だ」と強調する。台湾では多様な言論が競い合い、内容の妥当性を市民が検証する文化があるからだ。

「専制体制にとって最も耐えがたいのは、決められた筋書き以外の言論だ。中共が恐れるのは、自由な思考そのものである」と何氏は語る。

威圧から印象操作への戦略転換

「目立たず静かに心に染み込むような働きかけ」――これが、最近の中共のプロバイダー戦略に見られる新しい傾向だと専門家は指摘する。露骨な威嚇ではなく、理性的で穏やかな語り口で親中イメージを浸透させる方へと転換している。

「理性的で話の通じる中国」という印象を徐々に植えつけることで、人々はいつしかそれを中国の現実そのものだと信じ込む。何氏は「こうして形成された好印象が、政治的野心や人権問題を覆い隠す働きをしている」と警告する。

「批判を装った支援」の巧妙な手口

「落日海盗」は、「共産党は批判できるが、習近平は批判できない」と口にしていた。何氏によれば、これは「一見批判的に見せかけながら、結果的には政権の立場を補強する」巧妙な話術である。

勧誘段階では自由な議論を許容する姿勢を見せるが、金銭的関係ができた瞬間に要求が強まるという。従わなければ圧力がかかる。この構図こそ、中共式「心理的束縛」の手口だ。

情報戦の本質:真実と虚構の混ぜ技

何氏は「落日海盗」の主張を細かく検証しても意味はないとする。

彼自身の発言には虚実が入り交じり、他のインフルエンサーに関しても誤った認識を示していた。つまり、真実と虚構の境界をあいまいにすること自体が、戦略の一部なのだ。

中共のプロバイダー代理人は、相手の警戒心を和らげながら影響力を拡大していく仕組みを持っている。彼らの発言は、常に一部の真実と一部の虚構が絶妙に混ざって構成されている。情報の出所を見極める力こそ、今求められているものである。

冷静な判断が最大の防御策

何氏はこう締めくくる「どんなインフルエンサーの発言であっても、感情的にではなく、冷静で理性的に受け止めることが重要だ」

発信者の肩書きや国籍ではなく、その内容と根拠に基づいて信頼を判断する。そうした姿勢がなければ、誰しも情報操作の罠に陥る危険がある。

中共の宣伝戦略は今、より巧妙で境界の見えない形へと進化している。

最も有効な防御は、個々の市民が自分の頭で考え、事実を照らして物事を判断する力を持つこと――それに尽きるだろう。

常懷仁