中国国営テレビが放送する旧正月の恒例大型番組、中国中央テレビ春節連歓晩会で発表された公式キャラクターが、ネット上で波紋を広げている。
2026年版として登場したのは、四頭の馬をモチーフにしたデザインで、番組側は力強さと前進を象徴する存在だと説明した。番組テーマには「騏驥馳騁 勢不可擋」(優れた馬が力強く駆け抜け、勢いは誰にも止められないという意味)という言葉が掲げられている。
四頭の馬にはそれぞれ「騏騏(キキ)」「驥驥(キキ)」「馳馳(チチ)」「騁騁(テイテイ)」という名称が付けられた。いずれも中国古典に由来し、名馬や勢いよく駆ける姿を表す言葉である。

ところが中国の交流サイトでは、この四頭の馬を、新約聖書「ヨハネの黙示録」に登場する四騎士と重ねる見方が相次いだ。白、赤、黒、青灰色という配色が、疫病、戦争、飢饉、死を象徴するとされる四騎士のイメージに似ているという指摘である。こうした見方は一部のネット利用者による連想に過ぎず、宗教的な公式解釈ではないものの、短期間で広く拡散した。
この反応の背景には、国営メディアや当局に対する根強い不信があるとみられる。多くの中国人は、国営メディアが強調する明るさと、自分たちが直面している厳しい現実との間に大きな差を感じている。そのため、祝福や前向きを打ち出した演出を見ても、素直に喜ぶことができず、むしろ不安や皮肉を重ねて受け取ってしまう。
また、これだけ多くの関係者の確認や承認を経て世に出た公式キャラクターである以上、単なる偶然ではなく、何らかの警告のように感じるという声も見られた。
さらに、人通りが消えた商業施設や、住民の姿がほとんど見えない農村の映像が共有され、経済の冷え込みと将来不安が語られている。消費を控え、最低限の生活を維持することを優先する空気が広がる中で、人々は明るい象徴よりも、終末を思わせる物語に現在の状況を重ねてしまう傾向を強めている。
祝祭を演出するはずの公式キャラクターが、不安の象徴として読まれた。その受け止め方に、いまの中国社会の心理がにじんでいる。
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