中国 訴えの行き場を失った末の行動か

北京で陳情中の女性が農薬を飲む動画公開 生死は不明【動画あり】

2026/01/08
更新: 2026/01/08

昨年12月、湖北省出身を名乗る高齢の女性が、北京の国家信訪局近くで農薬を飲む様子を自ら配信し、動画が拡散した。

動画の中で女性は「もう生きる道がない」と語り、半分ほど残った農薬の瓶をカメラに映るように見せた後、そのまま口にした。配信後、視聴者に警察への通報を求め「遺体を回収してほしい」と書き残している。その後、女性からの連絡は途絶えており、現在も安否は分かっていない。

女性が飲んだとされるのは、中国で流通する中程度の毒性を持つ除草剤で、少量でも命に関わる危険があるとされる。今月に入ってからも、同じ薬品を飲んだ別の事例で死亡が確認されている。

支援者らによると、この動画が拡散した後も、当局の対応は問題解決ではなく、監視と統制の強化だったという。女性の安否を確認しようとした陳情者の連絡グループは、警察によって閉鎖され、情報の共有が断たれたとされる。

 

(湖北省出身とされる女性の陳情者が国家信訪局の外で農薬を飲む様子を配信、2025年12月、北京市)

 

12月24日には、湖南省婁底市の新型コロナワクチン被害を訴える女性、呉芳菲(ご・ほうひ)さんが、北京の滞在先で公安の家宅捜索を受けたとする動画が拡散した。農薬を購入したことが監視で把握され、自殺の恐れがあるとして警察が踏み込んだとされる。

また、農薬を飲む行為に限らず、北京では極端な抗議行動が起きているとの情報も相次いでいる。天安門周辺で自ら火を付けて抗議した人物がいたとする話も出回ったが、現場で撮影された動画や写真はその場で削除され、詳細は確認できていない。

さらに、国家信訪局(陳情局)周辺では、各地から派遣されたとされる「安定維持」担当者が陳情者を拘束し、強制的に地元へ戻す動きが常態化しており、追い詰められた陳情者が付近の川に飛び込む事例が繰り返し起きているとも伝えられている。

 



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なぜ中国の陳情者はここまで追い詰められるのか

中国には、行政や裁判に不満を持つ市民が、中央政府に直接訴えるための陳情制度がある。だが現実には、この制度は救済の仕組みとして十分に機能していない。

地方政府にとって、北京まで出向く陳情者は単なる苦情申立人ではない。
地方官僚の評価や出世に直接影響しかねない「危険な存在」と見なされやすい。

中国の官僚は、上級機関から「社会を安定させているか」「問題を起こしていないか」で評価される。自分の管轄地域から北京に陳情者が出ることは、「地元で問題を処理できていない証拠」と受け取られる。

とくに中央政府の窓口である国家信訪局に名前が上がれば、担当した地方官僚は「管理能力に問題がある」と見なされ、人事評価や昇進に影響する。

そのため地方当局は、訴えの中身が正しいかどうかよりも「北京に行かせないこと」「騒ぎを表に出さないこと」を最優先する。

結果として行われるのは、問題解決ではなく、陳情者の監視、拘束、強制的な帰郷、支援者との分断である。陳情者は「救済を求める市民」ではなく、「官僚のキャリアを脅かす存在」として扱われる。

それでも北京に集まる人々が後を絶たないのは、地方では訴えが完全に封じられ、他に道がないからだ。だが北京に来たからといって、問題が解決するわけではない。

陳情局の職員と地方当局が連携し、陳情者を地元へ強制的に戻したり、拘束や監視で行動を封じたりするケースも指摘されている。中央は問題を把握し、地方は責任を回避する。その狭間で、陳情者だけが排除されていく。

最後の希望だった場所で行き場を失い、生活も尊厳も奪われた末に、命を賭けてでも声を届けようとする人が相次ぐ。それは個人の選択ではなく、訴えを受け止めない制度が生み出した必然的な帰結と言える。

 



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李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!