昨年11月、高市首相が台湾情勢をめぐり「日本の存立危機事態になり得る」と発言して以降、中国共産党(中共)は日本に対する圧力を一段と強めている。自国民に日本への渡航自粛を呼びかける一方、周辺海空域での活動を活発化させ、自衛隊機へのレーダー照射も確認された。さらに中国で予定されていた日本人歌手の公演中止や、国際会議での対日批判など、外交・軍事・文化の各分野で対日強硬策が相次いでいる。
『日米中アジア開戦』などを執筆した時事評論家で民主活動家の陳破空氏は、中共が日本を標的にする最大の理由は「新たな心理戦」にあると指摘する。中共はこれまで台湾や周辺国を威圧しても相手は沈黙すると見てきたが、現在は自らを地域の覇権国と位置づけ、日本にも圧力を拡大しようとしているという。
陳氏によれば、日本は東アジアの主要国であり、島国で国土は比較的限られるものの、地理的・政治的に大きな影響力を持ち、中国と拮抗し得る存在と認識されている。中共が日本を直接標的にした背景には、日本の反応を探ると同時に、アメリカの対応を見極める狙いがあるとみられる。
陳氏はまた、高市氏の発言について「主観的な主張ではなく、事態を客観的に示したものだ」との認識を示す。台湾は第一列島線の前哨に位置する「不沈空母」とも称され、民主・自由陣営の最前線にあるとし、「もし台湾が陥落すれば、日本やアメリカ、フィリピンをはじめ周辺諸国への脅威は飛躍的に高まり、世界平和への影響も計り知れない」と述べた。台湾有事は、日本が国家の存立に関わる現実として備えるべき局面だという。

陳氏によると、中共が今回、日本に対する強硬姿勢を強めた背景には三つの理由がある。
第一に、習近平が高市氏との会談で想定外の対応を受け、強い遺恨を抱いた可能性がある。韓国で開かれた日中首脳会談で、習近平は大国の指導者として日本を牽制する意図で臨んだが、高市氏は香港や新疆の人権問題、台湾への軍事的威嚇について日本として懸念を伝え、国際社会の平和と繁栄に対する責任を果たすべきだと述べた。結果として、習近平は「相手を諭すつもりが、逆に諭される」形となった。
第二に、台湾をめぐる緊張が高まる中で、日本とアメリカがどの程度まで台湾防衛に関与するのかを見極める狙いがある。
第三に、党内および軍内部で権力闘争が激化し、国内の不満の矛先を国外に向けようとしている点だ。中央軍事委員会の何衛東副主席や苗華 政治工作部主任などの高官が相次いで失脚し、習近平の権力基盤は揺らいでいる。経済の失速や生活苦、企業経営の悪化への不満から目をそらすため、反日感情や民族主義を煽り、日本に対する強硬姿勢と大規模な反日キャンペーンを展開しているという。
陳破空
中国出身の時事評論家・作家、民主活動家。1989年の天安門事件後に2度の投獄を経て米国へ亡命し、以来、中国共産党の体制問題や中国政治の内情を鋭く分析する論客として活動。『常識ではあり得ない中国の裏側』など、日本でも複数の著書を出版。テレビのメンテーターとしても活躍中。
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