日比防衛協定 中共の脅威抑制に重要=専門家

2026/01/20
更新: 2026/01/20

日本とフィリピンは、アメリカ主導の「アジア版NATO」とも言える安全保障体制を強化するため、重要な二つの安全保障協定を締結した。専門家らはこれにより、中国(中国共産党)を抑止し、台湾侵攻に伴うコストを大幅に引き上げる効果があるとみている。

茂木敏充外相は1月15日、フィリピンの首都マニラで、マリア・テレサ・ラサロ外相と物品役務相互提供協定(ACSA)に署名した。協定は、両国の防衛当局間で物資や後方支援を相互に提供するための法的枠組みを定めるものである。

署名に合わせ、日本は、フィリピンに提供した複合艇(高速移動可能なゴムボート)の格納施設を整備するため、600万ドルの政府安全保障能力強化支援(OSA)を供与すると表明した。沿岸防衛能力の強化が目的だ。

これらの合意は、中国共産党(中共)が係争海域で「グレーゾーン」戦術による圧力を強める中で締結された。日本は1月16日、中国が東シナ海に新たに設置した資源開発構造物に対し「強い抗議」を表明しており、南シナ海では中国船とフィリピン当局との衝突が繰り返されている。

防衛協力の拡大

シンガポール南洋理工大学社会科学部の古賀慶准教授は、今回の防衛合意について、特定の国を標的とした軍事同盟ではなく、長期的な協力の深化を目的としたものだとの見方を示した。

同氏は大紀元に「ACSAは、中国を直接抑止するものではない。この協定は主に、軍事装備や物資の使用および提供に関する事務手続きを円滑化することを目的としている」と語った。

一方、台湾のアジア太平洋エリート交流協会の王志勝事務局長は、異なる見解を示し、この合意は、中共による継続的な嫌がらせや、第1列島線突破を狙う動きへの必要な対応だと指摘した。

「相互アクセス協定と今回のACSAにより、必要に応じてフィリピンは日本の自衛隊の展開を受け入れることが可能となった。これにより、日本の防衛範囲は、北部の第1列島線からフィリピンまで拡張される」と、王氏は述べた。

在フィリピン日本大使館によると、相互アクセス協定は、共同訓練や人道支援活動を円滑に実施するための法的枠組みであり、両国の部隊間の連携強化にも寄与するという。

「アジア版NATO」

これらの協定に対し、中共側は強く反発している。中共外務省の郭嘉昆報道官は1月16日の記者会見で、日本を「軍事的拡張」を進めていると批判した。

これに対し王氏は、中共自身が2021年の海警法制定などを通じて、インド太平洋地域における拡張志向を露呈してきたと反論。その結果として、アメリカ主導の同盟国が防衛協定を強化し、包囲網を形成するのは自然な流れだと述べた。

同氏は「この協定による防衛と情報共有の連動は、迅速な共同対応を可能にし、中国に統一戦線と向き合う大きな圧力をかける。新たな相互運用性によって、日本は南シナ海でフィリピンを支援でき、中国はフィリピン単独ではなく、二正面での対応を迫られる」と指摘した。

さらに王氏は、トランプ米大統領が、日本や韓国との同盟関係や、フィリピンとの頻繁な共同演習を通じて、インド太平洋地域での軍事・安全保障態勢を強化していると指摘した。

「こうした二国間・多国間の枠組みが重なり合うことで、いわゆる『アジア版NATO』が形成されつつある。これにより、アメリカは中国封じ込め戦略を集約し、米中の地政学的競争の戦略環境を根本的に変えようとしている」と語った。

台湾侵攻の抑止

日比が防衛協力を強化する中、台湾国防部によると、1月17日、中共軍の無人機1機が、台湾が実効支配するプラタス島の領空を一時的に侵犯した。

王氏は、この事案について、台湾侵攻の際に重要な通過ルートとなる宮古海峡とバシー海峡を結ぶ今回の協定の戦略的重要性を浮き彫りにするものだと指摘した。これらの海峡は、中共にとって台湾侵攻のリスクを大幅に高める要因になったという。

「これは、いわゆる接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略に該当し、日本、台湾、フィリピンを実質的に連動させるものだ。封鎖作戦は著しく困難になり、中共が攻撃を強行すれば、壊滅的な打撃を受けることになる」と王氏は述べた。

中共の接近阻止・領域拒否戦略は、台湾をめぐる有事の際に米軍を戦域から排除することを目的としている。台湾は事実上の民主的自治を行っているが、中共はこれまで統治したことがなく、それでも武力行使を含めた「統一」を掲げている。

王氏はさらに、協力がグレーゾーン事態への対処にまで拡大すれば、中共の当初の侵攻計画は「深刻な混乱」に直面すると述べた。

「これにより、中共は将来の台湾への軍事行動について、その実現可能性を改めて計算し直さざるを得なくなる」

ハイブリッド戦

インド太平洋地域で防衛態勢や関与が強化されているにもかかわらず、古賀氏は、中共の地域における強硬姿勢は今後も「大きく変化する可能性は低い」との見方を示した。

「中国は、この協定を差し迫った、あるいは決定的なものとは見なしておらず、従来の政策を継続すると考えられる」

一方、王氏は、中国の姿勢について、グレーゾーン戦術、経済的威圧、内部浸透という三つの手法に依存していると分析した。

同氏は「2025年を通じた南シナ海での中国の行動は、実質的には遠隔の岩礁を標的とした瀬戸際戦術だ。一方で、日本やフィリピンに対する経済的圧力は限定的な効果にとどまっている。日本は持ちこたえ、フィリピンも中国市場への依存を徐々に減らしている」と指摘した。

一方、王氏は民主主義国家は内部浸透に対して極めて高い警戒を維持する必要があると警告した。社会の分断が国内政治をまひさせ、中共が領土的利益を得るために付け込む隙を生む恐れがあるためだという。

「中国は、フィリピンでは地方首長を通じて浸透し、日本では内部の分断を利用してきた。グレーゾーン戦術や経済的威圧が通用しにくくなるにつれ、中共はこうした攪乱工作をさらに強めるだろう」と語った。

台湾拠点のライター。人権問題、米中関係、中国が東南アジアに及ぼす経済的・政治的影響、ならびに両岸関係を主な取材分野としている。