データは改善を示しているのに なぜ人々は経済が悪いと感じるのか

2026/01/20
更新: 2026/01/20

米国経済は、順調に推移していると見るか、深刻に停滞していると見るかは、誰に聞くかによって異なる。こうした認識のずれは、見方や立場の違いに起因する。複数の専門家がエポック・タイムズに語ったところによると、多くのマクロ経済指標はおおむね良好に見えるものの、社会の大きな部分が経験している痛みを十分に捉えていないという。

米労働統計局(BLS)が12月に公表したデータによれば、失業率は4.4%とわずかに高い水準にとどまり、賃金の中央値の伸び率は4%で、2.7%のインフレ率を上回った。しかし、世論調査では、米国人の大多数が経済状況に悲観的な見方を示している。

労働経済学者でリベリオ・ラボズの最高経営責任者(CEO)であるベン・ズワイグ氏は、この状況について、「雰囲気が実態より悪く感じられる『バイブセッション』の要素がある」と指摘した。

ズワイグ氏によれば、インフレ率が落ち着いたとしても、過去の物価上昇が生活費に組み込まれたままであるため、人々が不満を抱くのは自然だという。同氏は、人々が物価がインフレ前の水準に戻ると期待するのは現実的ではないとの認識を示した。また、数年前から積み重なった経済への不満が根強く、解消は容易ではないと述べた。

一方で、ズワイグ氏は、労働市場には深刻な兆候も見られると指摘した。2020年の新型コロナウイルス感染拡大による経済停止期を除くと、2025年11月の採用数は510万人未満と、この10年で最低水準となり、その後も回復が鈍いという。特に、労働市場に参入したばかりの若年層が大きな影響を受けているとした。

ズワイグ氏によると、求人件数は大幅に減少しており、その影響は若年層や初級職に集中している。また、低賃金労働者の賃金動向にも変化がみられ、中位以下25%の労働者は2015年半ば以降、他の層より速い賃金上昇を享受してきたが、2024年半ばごろからその傾向が逆転した。2025年には、この層の賃金上昇率は3.5%にとどまり、全体平均の4%を下回った。

こうした賃金の伸びはインフレ率を上回っているものの、データの背後にある実態を理解することが重要だと、マギル大学教授で経済行動と消費者行動の専門家であるエルナン・ハルヴィ氏は述べた。ハルヴィ氏は、賃金上昇は必ずしも個々人の昇給を意味するものではなく、実質的な賃上げを得るには転職が必要になる場合が多いと指摘した。

ズワイグ氏はまた、人工知能に限らない技術的効率化が、特に低賃金や初級職の仕事に影響を与えているとの見方を示した。技術は仕事全体を自動化するのではなく、細かな作業を自動化する傾向があり、結果として単純な職務ほど仕事が機械に置き換えられる「労働代替」が進みやすいと説明した。こうした動きは、所得格差の拡大につながる可能性があるという。

高齢層も厳しい状況に置かれている。55歳以上向けの求人マッチングプラットフォーム「ピボター」の創業者兼CEOであるスコット・シフ氏は、退職に必要な貯蓄が不足している高齢者にとって、社会保障制度の財政不安が迫る中、経済環境は特に厳しいと述べた。シフ氏によれば、こうした人々は平均以上のインフレや食料品など必需品の価格上昇を強く感じているうえ、求人市場では年齢が壁となり、就職が難しい状況に直面している。

ハルヴィ氏は、厳しい労働市場が近く改善するとは見ておらず、競争の激化や継続的なスキル更新、不確実性の高まりといった新たな現実に適応する必要があるとの見方を示した。

収入が伸びているかどうかにかかわらず、米国人の多くは財務面で健全な状態には達していない。貯蓄率は9月に4%まで低下し、パンデミック対策給付の影響で歪んだ2022年を除けば、2008年以来の低水準となった。

2025年第3四半期のクレジットカード債務残高は1兆2千億ドルを超え、そのうち1500億ドル超が90日以上延滞している。ハルヴィ氏は、人々が現在、貯蓄を取り崩して生活している状況にあると述べた。

「リジューム・ナウ」がまとめた2026年版の生活費危機報告書によると、米国人の約半数が昨年、支出を賄うために貯蓄を利用した。一方で、同調査では一定の改善も示されている。2024年末には、基本的な支出を賄えない、または賄うのに苦労していると回答した人は36%だったが、2025年末には24%に低下した。

債務に関するデータも前向きな動きを示しており、全体の債務残高の増加ペースは鈍化し、11月のデータではわずかに減少した。延滞率も同様の傾向をたどっている。

Petr Svab
ニューヨーク担当記者。以前は政治、経済、教育、法執行機関など国内のトピックを担当。