中国 安全確認アプリの流行が示した中国社会が抱える孤独

「死んだ?」アプリの人気の裏側 中国で何が起きているのか

2026/01/28
更新: 2026/01/28

中国で「死んだ?(死了麼)」という強烈な名前のスマートフォン用アプリが、若者を中心に急速に広まった。独り暮らしの安全確認を目的とした有料アプリで、中国のアップルのアプリ配信サービスでは、一時、有料ランキングの首位に立った。

このアプリは、利用者が二日に一度、簡単な操作で「生存確認」を行う仕組みである。一定期間、操作が行われない場合、あらかじめ登録した緊急連絡先に通知が届く。

開発者の一人は、長年一人暮らしをしてきた経験から、人と頻繁に連絡を取るのが苦手な人でも無理なく使える仕組みを考えたと説明している。

中国では近年、独り暮らしの人口が急増している。調査機関の報告によれば、独居人口はすでに一億人を超えたとされる。都市部では若者の単身生活が当たり前になり、家族や地域とのつながりは年々薄れている。

上海で十年以上一人暮らしを続けるデザイナーの女性は、このアプリについて「命を救ってくれるとは思っていない」とした上で、「万が一、誰にも気づかれずに亡くなる事態だけは避けたかった」と語った。発見が遅れ、周囲に大きな負担をかけてしまうことへの不安があったという。

一見すると高齢者向けのサービスにも見えるが、実際に利用が広がったのは若い世代だった。

経済メディアの編集者は、この流行について「若者の生存状態や心の奥を映し出す鏡のような存在だ」と指摘する。中国のネット上では、若者が自分たちを「家畜のように働かされる存在」などと皮肉る言い回しが広まり、冗談めかして自分を笑い飛ばす風潮がある。その裏側には、強いプレッシャーと将来への不安が隠れているという。

中国の若者は、激しい就職競争や長時間労働、高騰する住居費や生活費に直面している。さらに、交流サイトで拡散される「成功した人生」のイメージが、比較意識や焦りを強めている。こうした複合的な重圧の中で、孤独感を深める人は少なくない。

一方、中国社会では「死」という言葉自体が縁起の悪いものとして避けられてきた。このアプリ名に対しても批判が集まり、登録すると不運を招くといった声まで上がった。

こうした議論が続く中、開発側は名称変更を検討し、新たな名前を一般から募っていた。
しかし結論が出る前に、アプリは何の説明もないままアプリストアから消えた。

その代わり、機能や画面構成が酷似した別名アプリ(「生きてる?」など)が、ほぼ同時に大量に出回り始めた。

なぜ元祖だけが姿を消し、そっくりな模倣品が一斉に現れたのか。その経緯について、運営側や当局からの説明はないままである。

李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!