もしもあなたが、「海外で高給な仕事がある」と信じて渡航したとしたら——。
しかし、到着してみると、そこは詐欺の拠点だった。
暴力から逃れ、危険を冒して現地の大使館に助けを求めた。だが、そこで待っていたのは「保護」ではなく、「裏切り」であった。
信じ難い話だが、それは実際に起きた出来事である。
中国四川省出身の25歳の青年・李和(リー・ホー)氏は、2025年5月、中国語版TikTok「抖音(ドウイン)」で見かけた「ベトナム経由で港の荷物を運ぶ仕事」という募集を信じ、カンボジアへ渡航した。
しかし、連れて行かれた先は詐欺行為を強要する犯罪拠点であった。
そこでは、殴打や電気ショックによる拷問が日常的に行われ、犠牲となる者もいた。李氏自身も暴行を受け、逃走を試みたが捕まり、集団で殴られて肋骨を折られた。
李氏は本紙の姉妹メディアであるNTD新唐人テレビの取材に応じ、こうした体験を語っている。
極限状態の中で、李氏は家族と連絡を取り、家族は中国共産党の在カンボジア大使館に救助を求めた。
ところがその直後、詐欺拠点側は「大使館に連絡が入った」ことを把握した。
李氏は約3日間、手錠をかけられたまま吊るされ、食事も与えられず、炎天下に放置された。その後、別の組織に売り渡された。警察に助けを求めても、再び詐欺拠点に戻されただけであったという。
家族は正式な支援を断念し、25万元(日本円で約500万円)を支払った。現地の権力関係者を通じて詐欺グループに「この人物を解放せよ」と要請し、ようやく李氏は解放された。その際、「暴力はなかった」「詐欺はしていない」と口裏を合わせるよう強要された。
2025年7月末、李氏は帰国した。しかし今も、心身に深い傷を抱えている。彼が拘束されていた詐欺拠点はいまも稼働を続け、多くの人々が依然として閉じ込められたままであるという。
「政治的なことは、もう話したくない。ただ、もう少し生きたい」この言葉は、真実を語るよりも生き延びることを選ばざるを得なかった恐怖を物語っている。
独立系研究者の頼建平(ライ・ジェンピン)氏は「詐欺拠点は、悪人だけで形成されているわけではない。中国やカンボジア、ミャンマーなどの国々では、権力者や当局が見て見ぬふりをし、ときには手助けしているため、いまも続いているのである」と指摘している。
実際、カンボジアで大規模な詐欺拠点を運営してきたとされる中国系企業グループ「太子集団(Prince Group)」の元工作員は、中国共産党の警察組織の高官たちが同グループを保護していたため、長期間にわたり摘発を免れて活動できたと証言している。
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