「もう高い給料はいらない。ちゃんと帰れる仕事だけでいい」
中国の若者の間で、こうした声が広がっている。
背景にあるのは、厳しさを増す現実だ。長時間働いても収入は伸びず、休みも少ない。しかも仕事は安定せず、いつ職を失うか分からない不安がつきまとう。
かつては「努力すれば報われる」と信じられていた。だが今、多くの若者はそれを信じていない。
その変化は、日常の過ごし方にも表れている。
週末になると、スーツケースを引いた若者がスーパー銭湯に集まる。数千円で一夜を過ごし、スマホを見ながら静かに時間をつぶす。そこは、現実から少し離れるための場所になっている。
旅行の仕方も変わった。遠くへ行く余裕がないため、飛行機の乗り継ぎ時間を利用し、途中の街に短時間だけ立ち寄る。安い食事をして、少し歩き、また移動する。限られたお金で気分転換をするための工夫だ。
こうした行動に共通するのは、「無理をしない」という選択である。
高収入や出世を目指すのではなく、「定時で帰れること」「毎月きちんと給料が出ること」を重視する。目標そのものを引き下げることで、なんとか日々を乗り切ろうとしている。
その背景には、変えようのない現実がある。努力しても収入は増えず、将来の見通しも立たない。人脈や後ろ盾がなければ選べる仕事は限られる。
結婚や住宅購入といった将来設計も、多くの若者にとって現実的ではなくなりつつある。
その結果として広がっているのが、「あきらめ」である。頑張っても報われないと感じた若者たちが、やむを得ず選んだ生き方だ。
競争から一歩引き、目標を下げ、無理をしない。静かに広がるこの変化は、いまの中国社会が抱える問題の深さを映し出している。
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