中国では近年、「軟肋(ルアンレイ)」という言葉がネット上で、当局に握られる「弱み」を指す言葉として使われるようになっている。本来は肋骨を指すが、折れやすいことから転じて「弱点」を意味する。共産党当局が市民を従わせる際、この「弱み」を握る手法が常套手段とされ、その多くは国内に残る家族である。海外に出ても、家族がいる限り完全な自由は得られないと指摘する。
イギリスに留学中の中国人学生、唐埸淇(とう・ちょうき)が、実名で中国共産党を批判する声明を発表した。その後、中国国内に住む家族に対して圧力がかけられたと本人が明らかにした。
唐氏は3月22日、SNS上で自らの身分証の一部を示しながら「反共宣言」を公開した。動画の中で唐氏は、政治には関心がなかったが、厳しい行動制限や不公平な扱いを経験したことで考えが変わったと説明し、「自由にものが言える社会」を求める立場を明らかにした。
唐氏は宣言の中で、自身の政治的立場や行動は中国国内の家族や友人とは無関係であると明言していた。しかしその約1週間後、唐氏はSNSで、地元の関係者が両親を訪ね、発言をやめるよう圧力をかけたと訴えた。
これに対し唐氏は、「自分はイギリスにいるのだから、問題があるなら自分に直接来ればいい。家族を巻き込むな」と強く反発した。
また唐氏は、出国前に地元で留学生向けの研修が行われていたとも明かした。この研修は「貴重な機会」と説明していたが、実際は海外に出る学生をスパイとして育成する狙いがあったと指摘した。
こうした「弱み」を利用する手法は、中国の教育現場でも指摘されている。保護者に対し「子供の進学に影響する」と示唆して従わせるケースや、各種政策への協力を求める際に子供を通じて圧力をかける例も報じられてきた。
今回の出来事は、海外にいる個人の発言であっても、国内の家族が影響を受ける現実を改めて示した。家族という「弱み」を通じた圧力の構図は、今も続いている。
だからこそ、反共を掲げる華人の中には、SNSのプロフィール欄にあえて「軟肋はない」と記す人もいる。国内に残る家族という「弱み」を握られることを前提とした圧力に対し、「自分には握られる弱みはない」と示す意思表示であり、弱みを通じて沈黙を強いようとする側への静かな抵抗にほかならない。
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