米イスラエルがイランに対する軍事攻撃を開始してからすでに2か月以上が経過し、現在は2週間の一時停戦が続いているものの、その状態は極めて脆弱とみられている。戦闘によりホルムズ海峡は封鎖され、ペルシャ湾沿岸のエネルギーインフラも破壊されたことで、経済的損失は世界規模に広がっている。この過程でBRICSの沈黙姿勢は、結束の弱さが改めて露呈したかたちだ。
BRICSはブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカで構成され、現在の議長国はインドが務めている。イランは2024年に「BRICSプラス」に加盟した。また、同枠組みに後から加わったアラブ首長国連邦やサウジアラビアは、国内にある米軍基地がイランの攻撃対象となった。
米誌「ザ・ディプロマット」による最新の分析記事によると、中東での衝突発生以降、フィリピンでは燃料価格が2倍以上に高騰し、多くの家庭に影響を与えている。インドでは液化石油ガス(LPG)ボンベの闇価格が上昇し、出稼ぎ労働者が都市部から離れる事態となっている。さらに、食料の70~80%を輸入に依存する湾岸諸国では食品価格が急騰。ホルムズ海峡の閉鎖により肥料輸送も滞り、世界的な食料供給にもリスクが生じている。
同記事によると、イランの大統領および外相は、BRICS議長国であるインドに積極的な役割を果たすよう呼びかけたが、最終的に仲介に動いたのはパキスタンだった。このことについて、BRICS各国が優柔不断で結束できず、問題に積極的に関与しない姿勢を示しているとの見方が強い。昨年の12日間に及ぶイスラエルとイランの戦闘時にも同様の対応が見られた。
一方で、加盟国は自国の利益が関わる場合には迅速に行動している。具体的には、インドはイランと直接交渉を行い、自国船舶の一部をホルムズ海峡で安全に通航させた。また、中ロは国連安全保障理事会において異例ともいえる拒否権を行使し、湾岸諸国と米国が提出した、同海峡での防衛的な武力行使を認めるバーレーン提出の決議案を共同で否決した。
BRICSのこうした「集団的沈黙」は目新しいものではない。2014年のロシアによるクリミア併合時にも反応は鈍かった。一方で、国際金融機関への批判や、「アラブの春」に関連する北大西洋条約機構(NATO)のリビア介入を非難する場面では積極姿勢を見せてきた。
2022年のロシアによるウクライナ侵攻に対しても、BRICSは概ね沈黙を保ち、中国やブラジルの対応も形式的なものにとどまった。2025年にはブラジルで気候サミットが開催され、国連気候変動会議(COP30)に向けた準備が進められている。
分析では、こうした結束しない対応の背景に、現在の国際秩序に対する不満がある一方で、それに代わる新たな枠組みが十分に整っていないことが影響していると指摘する。新興国の間では、第二次世界大戦後に形成された国際ルールは西側諸国に有利で、意思決定も遅いとの不満が根強い。
しかし、BRICSのような新しい枠組みも結束が弱く、各国の利害が一致していないため、具体的な行動に結びつきにくいのが実情だ。
また、対テロ戦争や2008年の金融危機、コロナ禍といった一連の危機を経て、国連は長期的な機能低下と制度的疲弊に直面しているとされる。こうした中で、BRICS加盟国は自国利益を優先する傾向が強く、その運営は国連やASEAN、アフリカ連合、欧州連合のような制度化された地域的多国間の枠組みとは異なる様相を呈している。
記事は、BRICSが多様な勢力に対話の場を提供し、近年その規模を拡大してきた点は評価しつつも、首脳主導で結束の弱い構造が集団行動の制約となり、各国が個別利益を優先する要因となっていると指摘する。
次回のBRICS首脳会議は9月または10月にインドで開催される予定で、焦点は西アジアのエネルギー危機から世界経済の停滞問題へと移る可能性がある。国際社会の関心は再びグローバル・サウスに向けられる見通しだが、その期待はより慎重なものとなりそうだ。
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