「覇権による印太平洋支配を許さない」 米国防長官が演説 同盟国に国防費GDP比3.5%求める

2026/05/30
更新: 2026/05/30

ピート・ヘグセス米国防長官は30日、シャングリラ会合で基調演説を行い、トランプ政権はインド太平洋の安全保障を「強固に、静かに、明確に」維持する方針で臨むと強調した。

ヘグセス長官は同盟国に対し「ただ乗り」の即時停止を明確に求め、国防支出を国内総生産(GDP)比3.5%という「黄金基準」へ引き上げるよう要求した。また米中関係は近年最も安定した状態にあると指摘する一方、中国共産党(中共)政府に対して現状変更を試みないよう警告した。インド太平洋における中共への抑止は米国の防衛戦略に不可欠な柱だと同氏は述べた。

国防費GDP比3.5% 米国が定める新「黄金基準」

ヘグセス長官は演説の中で、同盟関係の真価は「旗の数」ではなく「戦闘編成の数」にあると強調した。

同盟国が長年にわたり米国の軍事力に依存して自国の防衛能力を低下させてきた構図は「持続不可能だ」と同氏は断言した。

ヘグセス長官は「トランプ大統領は第1期の初日から現在の第2期に至るまで、この点を一貫して明確にしてきた。同盟は真の協力関係となって初めて機能する。全員が参加しなければならない。ただ乗りは許されない」と語った。

国防予算についてヘグセス長官は、トランプ大統領が今年度に1兆5千億ドルの「世代的投資」を計画していることに言及し、同盟国・パートナー国にも支出拡大を求め「私たちは同盟国・パートナー国にGDP比3.5%の達成を求めており、私たちはその水準を大きく上回る投資をしている」と述べた。

防衛責任を果たさない同盟国に対しては、米国の「対応のあり方が明確に変わる」と警告した。

「インド太平洋における中共への抑止」を柱に

小泉進次郎 防衛大臣との質疑の中で、ヘグセス長官は米国の新たな国防戦略には4つの柱があると説明した。米本土・西半球への注力、インド太平洋における中国共産党への抑止、同盟国による防衛負担の分担、そして米国防衛産業基盤の全面強化の4点だ。

ヘグセス長官は「4つの柱を明確に示した」「多くの人が第1の柱にのみ注目しすぎていると思う」と述べた。

ヘグセス長官は、米国は本土および西半球の安全保障に重心を移してはいるが、インド太平洋に背を向けることはなく、同地域への戦力投射と同盟国との協力を引き続き最優先課題の一つとして位置づけていると強調。

「国防計画指針や国防戦略を見れば、私たちが資金・演習・計画を最も困難な問題、すなわち同地域への戦力投射と同盟国・パートナー国との連携に振り向けていることがわかる」

「だからこそ私は他のどの地域よりも多くインド太平洋を訪問しており、各国と個別に会合を重ねてきたし、今後も続ける」と述べた。

基調演説の中でヘグセス長官はまた、太平洋が「支配的な覇権」の下に置かれることを米国は決して認めないと改めて表明した。中国共産党が同地域で増大させる影響力と脅威に対抗する姿勢を明確に示したものだ。

さらにヘグセス長官は、トランプ大統領と中国共産党党首の習近平が北京で会談し関係再構築で合意して以来、両国は「建設的な戦略的安定」に向けた共通認識を築いており、米国は「冷静かつ善意をもって」中共政府側と関与していくと述べた。

米中関係が緩和に向かう中でも、ヘグセス氏長官は毅然とした姿勢を崩さなかった。

「米国は太平洋国家であり、同地域における米国の長年の立場を中国側が尊重するよう強く求める」

ヘグセス長官は「私たちは対応のあり方を変えつつある。パフォーマンスとしての憤怒の時代は終わった」「どのような形で、どのタイミングで意思疎通を図るかは意図的に判断していく」と語った。

米軍の弾薬備蓄は十分 対台湾武器売却とイラン作戦は別問題

演説後の質疑応答で、英国代表が140億ドルの対台湾武器売却案が「壮絶な怒り(Epic Fury)」作戦の影響で遅延しているとみられると指摘したのに対し、ヘグセス氏は「この二つは明確に切り離して考える」と応じた。

「自国の備蓄には非常に自信を持っている。中東においても、世界規模においても、精密誘導兵器と大量の汎用弾薬の間で適切なバランスを保っている」とヘグセス長官は述べた。

「現状にも、今後の生産能力にも満足している」米軍の備蓄をめぐる多くの報道は虚偽情報だと指摘した。

対台湾武器売却に関する今後の決定はトランプ大統領が自ら下すとし、米中首脳会談後も台湾に対する米国の政策的立場は変わっていないと表明した。

同盟国に「力による平和」を促す

ヘグセス長官は演説の中で域内同盟国の取り組みを個別に評価した。日本が国防支出をGDP比1.9%へ引き上げたことは評価しつつも、「まだゴールラインには届いていない」と述べた。

韓国がGDP比3.5%への予算増額を決定したことを称え、核抑止力強化を目的とした「原子力潜水艦」の建造要請にトランプ大統領が前向きな姿勢を示していると明かした。

またフィリピン、シンガポール、ベトナム、インドなどが防衛近代化で前進していることを称賛し、インドとは対戦車ミサイル「ジャベリン」の共同生産を推進中だと述べた。

ヘグセス長官はまた、多くの西側諸国が「ルールに基づく国際秩序」という空洞化したグローバリズムの言辞に気をとられてきたと述べた。

ヘグセス長官は「ルールはもちろん重要だ」「しかし、ハードパワーでそれを裏打ちできなければ、そのルールは紙切れ以下だ」と述べている。

米国防産業を再構築 「世界自由兵器廠」構想を提示

ヘグセス長官は演説の中で米国防産業の転換ビジョンを示した。5大防衛企業による寡占とペンタゴンの官僚機構に依存してきた従来モデルはもはや現代の課題に対応できないと率直に認め、実業界出身のスティーブ・ファインバーグ国防次官が「防衛製造業における歴史的な動員」を推進していると述べた。

今後の重点は「速度と規模」だとヘグセス氏は強調した。10年をかけて完璧な兵器を追い求めるのではなく、2年以内に実戦投入可能な装備を届けることを目指すと語った。

この目標を実現するため、米国は5〜7年の長期契約を提供し、民間企業が自己資金(現時点で500億ドル規模)を投じて工場を増設するよう促す。主要サプライヤーを現在の水準から10〜20社規模へ拡大することが目標だ。

この転換は同盟国にも及ぶ。ヘグセス長官は「世界自由兵器廠(Arsenal of Freedom)」構想を提唱し、同盟国は将来的に装備の供与を受けるだけでなく、米国とともに強靭な産業基盤を共同で構築できると述べた。

「世界中で同じことに取り組むパートナーとの共同生産がそこに加わるならば、それこそが私たちに必要な世界自由兵器廠の構築につながる」とヘグセス長官は語った。

陳霆