中国共産党の外交システムと国家安全システムの間で、近年、幹部の相互異動や兼任が相次いでいる。国家安全部出身者が外交部内で監督的役割を担う事例も見られ、専門家は、外交と国家安全が本来一体である体制構造を示すものだと指摘している。
国家安全部は、外国の諜報活動の摘発や国内の反体制活動の監視などを担う情報・治安機関である。
中国外交部と国家安全部の人事交流の現状
中国外交部の公式サイトは最近、「主要官員」欄を更新し、国家安全部元副部長の李謙が外交部党委員会委員および中央紀律検査委員会・国家監察委員会の外交部派遣紀検監察組組長に就任したと発表した。同サイトでは、李謙は外交部副部長の馬朝旭と華春瑩の間に位置付けられている。
李謙の経歴はほとんど公表されていない。2025年8月にベトナムを訪問したが、報じたのはベトナム側メディアのみだった。中国問題専門家の李林一氏は、紀検監察組組長は事実上外交部内の「監督役」に相当し、李謙が国家安全出身である点は国家安全系の影響力拡大を示すと指摘。当局は外交官に関わる政治案件を、従来の反腐敗問題以上に重視している可能性があるという。
逆方向の人事も確認されている。外交部副部長の孫衛東は今年4月に解任され、その後の動向は一時不明だったが、6月末の党創建記念音楽会に中央国家安全委員会弁公室常務副主任として姿を見せた。前任の劉海星は外交部に長く在籍後、2018年に国家安全委弁公室副主任へ転じ常務副主任に昇格、2025年9月には外交分野に復帰し対外連絡部長に就任した。
外交と情報機関の「一体構造」の歴史的経緯
李林一は、国家安全機構がもともと外交部門から分離した経緯があり、両者は本来一体だと指摘する。1958年設立の中央外事小組と国務院外事弁公室は文革期に廃止され業務が外交部に統合、1981年に外事工作領導小組が復活、2000年に国家安全工作領導小組が設置され実質一体運営となった。2014年の国家安全委員会設立、2018年の外事工作委員会格上げにより、両者は並列機関として再編された。
海外で指摘される外交官の情報活動関与
複数の指摘によれば、中国外交官の一部は実質的に情報活動に関与しているとされ、越境的な抑圧活動における在外公館職員の関与も問題視されている。
カナダ駐在外交官の趙巍は2023年、議員への威圧や情報収集への関与で国外追放となった。同年5月、カナダCTVは中国の外交官数(約176人)が他国に比べ不自然に多いと報じ、元カナダ安全情報局幹部はその約70%が通常の外交業務に従事していない可能性を指摘した。
同様の懸念は他の西側諸国でも共有され、在外公館による親中団体の動員、留学生監視、抗議活動への対応、海外拠点運営への関与などが指摘されている。
秦剛や劉建超といった外交高官も情報活動との関係が取り沙汰される。
元米外交官ジョン・J・トカチクは、中国外交人員服務局出身の職員が米国施設の動向把握に努めていたと証言し、その中には後に外相となる秦剛も含まれていたという。トカチクは、これらの職員が国家安全部に属し外交を隠れ蓑としていた可能性を指摘する。
中国の一部外国語大学も国家安全機構と密接な関係を持ち、1980年代には対外工作員の養成拠点だったとの見方もある。こうした背景から、外交と情報活動の境界は極めて曖昧だとする指摘が強まっている。
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