中国 短編ドラマの審査強化 情報の自由な流通を警戒か

2026/09/02
更新: 2026/09/02

中国当局は9月1日、縦型の短編ドラマ「マイクロドラマ」を対象とする新規則を施行した。すべての作品に配信前の審査を求め、AIで制作した作品には各話での表示も義務づける。市場が急拡大するなか、当局によるコンテンツ管理が一段と強まる。

背景には、短編ドラマを通じて情報が広がることへの警戒があるとの見方も出ている。

報道によると、今年上半期、中国版TikTok「抖音(ドウイン)」で公開されたAIを使った短編ドラマやアニメーション形式の短編ドラマは、22万1900本に上った。一方、業界レポートが採算ラインの目安とする再生回数に達した作品は、全体の1.3%にとどまった。

中国、短編ドラマに配信前審査を義務化

中国では近年、マイクロドラマ市場が急速に拡大している。

中国ネット視聴覚協会の『中国マイクロドラマ産業発展白書(2025年)』によると、利用者は6億9600万人で、インターネット利用者の63.3%を占める。2025年の市場規模は677億9000万元、約1兆3600億円に達し、中国映画の年間興行収入を上回る見通しである。

中国国家ラジオテレビ総局は9月1日、『マイクロドラマ発展管理弁法』を施行した。

新たな制度では、すべてのマイクロドラマに配信前の審査を義務づけ、許可証番号または番組番号の表示を求める。投資額の大きい作品や、政治、国家安全保障などを扱う作品には、より厳しい審査を行う。

AIを使って作られた短編ドラマについては、AIを使用したことを示す表示を、各話の分かりやすい場所に付けることも求める。

中国国内で制作され、海外向けに配信される作品も対象となる。当局は「公共の利益」を理由に、作品の修正や配信停止を命じるほか、流通や宣伝を制限し、関連する国際交流活動への参加を禁じることができるとしている。

中国当局は2025年2月、マイクロドラマを対象に、作品の分類に応じて審査する制度を導入していた。配信プラットフォームに対し、許可証番号や届出番号が表示されていない作品を公開、拡散、外部サイトへの誘導、推薦の対象にしないよう求めている。

専門家「短編ドラマは情報拡散の新たな経路」

学者の何澄輝氏は中央通信社に対し、AIを使った短編ドラマは手軽に視聴でき、特定の年齢層や集団に広がりやすいため、大きな影響力を持つ可能性があると指摘した。

時事評論家の唐靖遠氏は、大紀元の取材に対し、中国当局が短編ドラマへの統制を強める背景には、情報が自由に広がることへの警戒があると述べた。

人気を集める作品が、当局にとって都合の悪い内容を比喩的に伝える可能性があるためだという。娯楽作品であっても、社会への不満や現実の問題を表現できるとしている。

台湾・国防安全研究院の龔祥生研究員は、短編ドラマはテンポが速く、広がりやすいため、若者に影響を与える新たな手段になっていると指摘する。

「爽感」と呼ばれる痛快さを重視した作品が、政府への風刺や社会への不満の表現に使われれば、当局の統制が及びにくくなる可能性があるとみている。

AI短編ドラマ22万本、採算ライン到達は1.3%

データサービス企業の報告では、中国本土のAIを使った短編ドラマ業界は、採算面で厳しい状況にある。

デジタルマーケティングデータ企業DataEyeが今年7月に公表したレポートによると、上半期に抖音で公開されたAIを使った短編ドラマやアニメーション形式の短編ドラマは、計22万1900本だった。

このうち、再生回数が1億回を超えた作品は1055本で、全体の約0.48%にとどまった。アニメーション形式の短編ドラマには、漫画やアニメーション、AIによる人物表現などを使った作品が含まれる。

レポートは、再生回数5000万回を採算ラインの目安としている。この水準に達した新作は2886本で、全体の1.3%だった。新作77本につき、採算ラインに達した作品はおよそ1本となる。

ただ、この数値は抖音だけの集計である。複数のプラットフォームで配信される作品もあり、業界全体の採算状況を示すものではない。

DataEyeのドラマ分析サービス「劇查查」の林啓文副社長は、AIの導入で制作費は約9割下がった一方、視聴者を集める費用は前年同期の2倍以上に増え、作品から得られる収益は5割を超えて減ったと述べた。

その結果、制作者は、かえって早い段階で赤字に陥る可能性があるという。

AI映像制作に携わる黄楚傑氏も、一部の案件では、多重下請けによって受注価格が下がり、映像生成に必要な計算資源の費用も賄えない水準になっていると語った。

実写短編ドラマも減少、横店の撮影開始件数は低迷

一方、実写形式の短編ドラマも減少している。

DataEyeのレポートによると、短編ドラマ配信プラットフォーム「紅果」の月間ランキングに入った実写の新作は、2月の432本から、6月には110本に減った。

中央通信社によると、今年第1四半期、横店で短編ドラマの撮影を始めた件数は、前年の同じ時期と比べておよそ75%減少したという。