中国 失踪の増加と臓器移植推進が生んだ自嘲

「零件」 部品と呼ばれる中国の庶民

2026/02/01
更新: 2026/02/01

「零件(リンジェン)のみなさん、こんにちは」――。

中国のSNS上で、配信者が視聴者に向かってこのように呼びかける動画が拡散し、大きな反響を呼んでいる。動画には多くの「いいね」が集まり、コメント欄には不安や皮肉を込めた書き込みが相次いだ。

「零件」とは、本来、機械や製品に使われる部品を意味する言葉であり、人の身体に使うことは通常ない。しかし近年、中国語圏では人の臓器を指す言葉として日常的に用いられるようになっている。

背景には、近年、中国で失踪者が急増している現実がある。一方で、臓器移植は国家的に推進され、「命を救う医療」として強く奨励されている。しかし、失踪者は見つからないまま、臓器収奪の被害が疑われる不審死が学生などの間で相次いでいる。

失踪者の増加と臓器移植の推進が同時に進む現実の中で、「庶民の健康な臓器が、富裕層や特権階級のための交換用在庫として見なされているのではないか」との感覚が社会に広がっている。

こうした状況を前に、人々はあえて自らの臓器を「零件」と呼ぶようになった。刈られる側に置かれているという無力感と、奪われる恐怖を引き受けた、自嘲の言葉である。

関連動画のコメント欄には、「自分は持病がある」「健康ではない」と書き込む者が目立つ。健康であること自体が、奪われる理由になるのではないかという恐怖がにじむ。

また、子どもを守るために、他国では想定されない行動を取る親も増えている。連れ去られそうになった際には「私は病気だ」と叫ぶよう我が子に教え、学校の調査票にはあえて「アレルギー体質」と記し、事実でなくても「我が子は健康ではない」という情報を病院のデータに残そうとする。臓器移植に適さない存在だと示すことでしか、子どもを守れないのかもしれない。親たちはそれほどまでに追い詰められている。

「零件」 この二文字には、いまの中国社会に広がる不安と諦めが凝縮されている。

李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!