米最高裁「トランプ関税」違法判決 日本企業に追い風も新10%関税

2026/02/21
更新: 2026/02/21

米最高裁がトランプ政権の相互関税を違法判断。日本輸出企業に還付追い風も、新10%関税発動でリスク残る。日米投資合意の影響は?

2月20日、米連邦最高裁は、国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に導入されたトランプ政権の「相互関税」などの高関税措置を違法と判断した。

判決は、大統領が「緊急事態」を口実に包括的な追加関税を課すことは議会の付与した権限を超えるとの趣旨であり、従来の国際貿易裁判所および連邦控訴裁の違法判決を最終的に追認した形である。

違法とされたのは、日本を含む約70か国・地域に対して課されていた「相互関税」などの追加関税であり、自動車や機械など日本の主力輸出品も対象となっていた。

日本への具体的な関税措置

日本向けには、全品目に一律10%の基本関税を課したうえで、対米貿易黒字国向けの「相互関税」として15%を上乗せする構造が採られ、日本からの輸出には合計で約15%の関税がかかる設計となっていた。

自動車やエンジンなどについては、従来の2.5%関税に加え25%の追加関税が課された結果、最大で27.5%まで跳ね上がった時期もあった。その後の日米交渉で追加分が引き下げられ、最終的に自動車関税を15%程度に抑えることで合意していた。

日本経済への影響  輸出企業追い風

高関税は日本の自動車・機械・化学などの輸出コストを急激に押し上げ、価格競争力を削いでいたが、違法判決によりこれらの追加部分は失効・縮小に向かう見通しであり、日本企業には追い風となる。

すでに豊田通商、住友化学などの日本企業は「相互関税」分の返還を求め米政府を提訴しており、判決確定により過去に支払った関税の一部について還付請求が現実味を帯びている。

関税還付と企業行動

ロイターによれば、米政府が徴収した対象関税は世界全体で約23兆円規模に上るとされ、約1千社が還付を求めているという。

日本企業も米国際貿易裁判所への提訴や共同訴訟への参加を通じて関税還付を求める動きを強めており、還付が実現すれば、業績や投資余力の改善に直結するとみられる。

トランプ新策  一律10%代替関税発動

トランプ大統領は最高裁判決を受けた緊急会見で「深く失望した」と述べる一方、IEEPAに代わる措置として「すべての国・地域を対象とした一律10%関税」を即日発動すると表明した。

これは、国や品目ごとに差を設ける「相互関税」とは性質が異なり、法的には争点を変える狙いがあるとみられるが、日本にとっては「追加関税の一部がなくなる一方で、恒常的な一律関税が残る」という新たな負担構造を生み出す可能性がある。

日本政府の立場と外交対応

日本政府は発動前から繰り返し訪米して交渉を重ね、当初24%と通告されていた日本向け相互関税を15%に引き下げるなど、影響の緩和を図ってきた。

日米は2025年7月、米側が相互関税や自動車関税を引き下げる代わりに、日本側が総額5500億ドル(約84兆円)の対米投資を行う大型合意を締結しており、日本政府はこれを日米同盟および経済関係の柱として位置づけてきた。

最高裁がIEEPAに基づく関税発動を違法としたことで、「高関税と引き換えの対米投資」という構図は法的根拠を失い、投資約束の履行をどう扱うかが新たな政治・外交課題となっている。

経済官庁の幹部は「対米投資は日本企業にとっても利益があり、違法判決で合意が直ちに無効になるとは限らない」と述べ、投資のペースや配分については今後の米側との協議次第との認識を示している。

政治・国内世論への影響

日本国内では、野党や一部専門家から「違法な関税とバーターになっていた対米投資合意を見直すべきだ」「還付請求と合わせて日本政府としても損失補填を米側に求めるべきだ」との声が上がっている。

一方、政府・与党内には、トランプ政権との関係悪化を避け、同盟関係を優先しながら静かに修正を図るべきだとの慎重論も根強く、「対米関係」と「国内企業・国民負担」とのバランスが問われる局面となっている。