イスラエル専門家がトランプ大統領の戦略を「酸素戦争」と命名。イラン・ベネズエラの石油ルートを断ち、中国共産党(中共)の支援網を崩壊させる狙い。ベネズエラ原油中国輸出減、ホルムズ海峡混乱で新秩序構築へ。
トランプ氏、中共築く旧秩序を破壊
イスラエル・イノベーション・ファンド(TIIF)の創設者で最高経営責任者のアダム・スコット・ベロス氏は、「エルサレム・ポスト」紙に寄稿した評論記事「酸素戦争(Oxygen War):中共が予期しなかった新秩序」を発表した。
ベロス氏によると、地政学とは一種の配管システムのようなものであり、このシステムを変えれば、それに依存するすべてのもの――資金、同盟、イデオロギー、そして政権の稼働速度――が変化するという。
中共をはじめとする世界で最悪の政治体制は、制裁や声明を繰り返すだけで無期限に「管理」できると考えてきた。しかし、新たな秩序は冷酷無情であり、その根幹は価格形成にある。いわば「安価な酸素」(石油収入や制裁回避の経路、無防備な海上交通の要所)を断てば、旧秩序に依存していた政権は揺らぎ、最終的には窒息状態に陥るという。
記事はこう分析している。トランプ氏およびルビオ氏の地政観が鋭いのは、表面的な対症療法ではなく、システムそのもの――港湾と製油所の連携、タンカーとペーパーカンパニーの接続、そしてイデオロギーと資金の結びつき――を破壊しようとしている点にある。彼らの目標はイランやベネズエラにとどまらず、テヘラン、カラカス(ベネズエラ首都)、モスクワ、そしてそれらを背後で支援する中共の運営コストを耐えがたいまでに引き上げ、崩壊へと追い込むことである。
米国主導による新エネルギー戦線
記事によれば、アメリカがベネズエラの独裁者マドゥロを拘束して以降、最も顕著な変化は発言ではなく物流に現れている。ベネズエラの2月の石油輸出量は日量約73万7千バレルであったが、注目すべきは輸出先の方向性である。中国向け輸出が大幅に減少し、アメリカおよび欧州向け輸出が急増した。しかも、その流通はアメリカが認可した商社が主導している。
長年、中共はベネズエラ原油を購入するだけでなく、最終買い手としての役割を果たし、同国政権の保証人として機能してきた。しかしこの「パイプ」が締め付けられると、ベネズエラが失うのは収入だけではない。時間、交渉の余地、そして「北京が必ず救う」という幻想さえも消えるのだ。
他国もこの動きを注視し、情勢を再評価し始めている。中共の「保護」が形骸化して見えれば、取引諸国は「忠誠条項」を再検討せざるを得ない。
次の焦点はイランである。このイスラム共和国は地理的優位と地域の不安定さを交渉力に転化してきた。だが、数日で米・イスラエル連合軍がイランのエネルギーシステムを徹底的に破壊した。イランがホルムズ海峡の封鎖を宣言すると、保険会社は戦争保険を停止し、タンカーは航路を回避し始めた。
記事では、現代の戦争は、領土を征服せずとも過去の常識を覆すことができると指摘している。重要なのは、既存の航路を現実的に維持できなくすることだ。主要輸出国が即座に航路変更を余儀なくされれば、それは単なる地域紛争ではなく、世界経済の血流そのものを再構築する兆候となる。
中共の生命線崩壊、廉価石油取引の終焉
記事はここで焦点を中共に移す。中共は権威主義体制の「中央銀行」のような存在である。それは「好かれているから」ではなく、「他国が入手できない資源を買い、他国が融資できない案件に資金を投じる」ことで維持されている。
中共はイランの石油輸出量の8割以上を極めて低価格で購入してきた。その結果、制裁逃れの製油業者が密かに利益を得る構造が形成されている。こうした関係はイランの生命線であり、中共にとっては「廉価なエネルギーと戦略的影響力」という両得の手段となっている。
しかし、輸出が不安定化し、要衝が戦場となれば、こうした「値引き取引」は得策ではなく負担へと転じる。中共はすでにエネルギー供給確保のため、自前の手段による対策を模索している。
もちろん、中共が完全に打つ手を失ったわけではない。アナリストによれば、中共は備蓄、価格統制、過剰供給といった緩衝メカニズムを構築し、短期的衝撃に対する異常な耐性を持つ。さらに、他国が完成油を奪い合う中で、自国製品の輸出によって利益を上げることも可能であるという。だがそこにこそ罠がある。すなわち「短期的な耐性が長期的なリスクを覆い隠す」のである。
記事は強調する。中共が制裁下の政権に資金を注ぐ曖昧な戦略は、結果として国際的孤立を深める。この孤立は公然とは表れず、静かに、しかし確実に進行していく。
中露関係に試練、ロシアの離脱選択迫る
同記事はさらに、中国とロシアの関係についても分析する。両国は生存のために結びついているが、その基盤は忠誠ではなく「圧力」である。もし中共の孤立が周辺諸国への負担となるなら、ロシアは冷静で非情な判断を迫られる――すなわち、「中共の属国であり続けるか」「その軌道から最初に離脱する大国となるか」という選択である。
記事は次のように結論づける。これは人民に対する戦争ではなく、体制間の衝突である。西側の民主主義体制は、「人間の命には固有の価値があり、異議は反逆ではなく、個人は国家の所有物ではない」という確固たる信念の上に築かれている。
一方、共産主義、ファシズム、イスラム原理主義はいずれも人間を「燃料」と見なし、革命、帝国、神話、あるいは支配者の延命のための資源として扱う。彼らは異端を抑圧し、暴力を外部へ委託するが、それは安定ではない。こうした体制は、安価なエネルギー、制裁の抜け道、混乱による闇資金に依存してきたが、その時代は終わりを迎えつつある。
記事は最後にこう締めくくる。中共は「値引き」と「曖昧戦略」によって帝国を築き、他国が制裁対象とする石油を買い取って「中立」を装ってきた。しかし、新たな「酸素戦争」は、名目や建前を意に介さない。石油パイプラインが崩壊した後に問われるのは、「誰が代償を払うのか」という一点である。「近い将来、中共こそがその代価を支払うことになる」と記事は結んでいる。
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