中共に取り込まれた国連

2026/04/21
更新: 2026/04/21

論評

国際連合は1945年、アメリカの戦略的構想のもとで創設された。すなわち、第二次世界大戦後に米主導で築かれた国際秩序の礎として、多国間主義の装いをまとった「パクス・アメリカーナ」の枠組みだった。

しかし、その構図は時とともに根本から変質した。過去25年間で、中国共産党(中共)は組織的に国連に浸透し、人事を通じて影響力を強めると共に、組織運営の方向性も変えてきた。その結果、国連は、かつてアメリカが形づくった道具から、北京がますます主導権を握る場へと変わった。そして、その運営費のかなりの部分はアメリカの納税者が負担している。

米国の戦略的競争相手に資金援助

米外交問題評議会によれば、2025年時点でアメリカは国連通常予算の22%、国連平和維持活動(PKO)拠出金のおよそ26%を負担していた。また、米議会調査局によると、2025~2026年のPKO予算だけでも54億ドルに上る。

皮肉なのは、中国の負担割合が2025年時点で国連通常予算の約20%に達していたことだ。これは1994年のわずか0.77%から大きく増えた数字であり、PKO予算でも中国の分担率はほぼ23%に上っていた。これにより、中国は通常予算、PKO予算のいずれでもアメリカに次ぐ第2位の拠出国となった。

中共は資金面での存在感を拡大し、それをてこに影響力を強めてきた。その一方でアメリカは、中共が自国の利益に反する形で利用している国連に対し、資金を拠出し続けてきたことになる。ヘリテージ財団によれば、アメリカの任意拠出金だけでも、中国の国連システム全体への総拠出額の7倍に達する。それにもかかわらず、北京はより少ない拠出で、はるかに大きな影響力を手にしてきた。

アメリカの未払い分担金は、通常予算で15億ドル、PKOで24億ドルに上る。これは、歴代の米政権が一貫性を欠きながらも、この組織に対する費用と見返りの均衡がすでに崩れていることを感じ取ってきたことを如実に示している。

中共 25年にわたる浸透戦略

中共による国連の政治的支配は偶然の産物ではない。これは、人事、資金、投票ブロック、規範形成といった各分野で進められてきた、意図的かつ辛抱強い多面的戦略の結果である。

資金拡大

国連システム事務局長調整委員会によれば、中国の国連に対する義務的拠出金と任意拠出金は、2010年から2019年だけでも、それぞれ1096%、346%増加した。どのような組織であれ、資金は影響力や支持を広げ、票を取り込む力になる。

専門機関トップの掌握

2006年までは、中国人が国連の専門機関のトップを務めたことは一度もなかった。ところが近年では、中共はどの国よりも多くの国連専門機関でトップポストを占めてきた。ヘリテージ財団によると、2015年から2021年までの7年間のうち6年間で、中国人が4つの専門機関のトップを務めていた。

標的となった機関の選定は偶然ではない。中共は、それらの業務を「中国製造2025」など自国の国内戦略と結び付けられる機関群を慎重に選び出し、中共の国家支援を受けた中核企業を軸に新たな国際技術標準の形成を進めるとともに、それを「一帯一路」構想を通じた北京の対外政策とも連動させてきた。

国際電気通信連合(ITU)では、中国出身の代表が2期にわたってトップを務めた。その結果、華為技術(ファーウェイ)の標準が、アフリカ、太平洋地域、東南アジアなど、通信インフラの整備がなお十分でない市場に組み込まれることになった。

官僚機構の掌握

ローウィー研究所は、中共当局者が2007年以降、国連経済社会局(DESA)を主導してきたと指摘している。外交筋の間では、「DESAは中国の持ち場であり、そのことは誰もが知り、誰もが受け入れている」とまで言われている。

DESAは、国連システム全体にわたる経済・環境・社会政策の基本的な方向性を左右する部局である。査読付き論文でも、その構図は明らかにされている。すなわち、中共は影響力の弱い国々と連携して幹部人事を押さえ、そうして選ばれた親中派の幹部が、中共の文書に沿うように国連の公式文書や表現を整えていく。中共は自らの人材を送り込み、その人々が組織の議論の枠組みそのものを書き換えていくのである。

投票ブロックの形成

中共は77カ国グループ(G77)の中で大きな影響力を行使している。G77は134か国から成り、国連加盟国全体のほぼ70%を占めている。

なかでもアフリカ諸国は、地域別で最大の投票勢力として約28%の票を持ち、中共の台頭を支えるうえで重要な役割を果たしてきた。中国人を国連の主要4機関のトップに選出したほか、さらに9機関で副職ポストの確保にもつながった。

中共によるアフリカへの「一帯一路」投資は、北京に大きな地政学上の見返りをもたらしてきた。

国連指導部の取り込み

戦略国際問題研究所(CSIS)によれば、北京はグテーレス事務総長を含む国連指導部に働きかけ、「一帯一路」を後押しするとともに、それを国連の持続可能な開発目標(SDGs)と結び付けてきた。国連の指導者たちは、事実上、中共の地政学的インフラ構想の宣伝役となってきたのである。

国連安保理 拒否権で米国を封じ込める中露連携

過去10年間に中共が行使した国連安全保障理事会での正式な拒否権9件は、いずれもロシアと足並みをそろえたものだった。中露両国は、アメリカ、イギリス、フランスに対抗する実質的な外交ブロックを築き上げ、結果として西側3か国は十分に対抗しにくい状況に置かれた。そして中露連携は、ロシア・ウクライナ戦争を受けてさらに強固なものとなっている。

中は今日、シリア、ベネズエラ、北朝鮮、ミャンマー、ジンバブエに関するアメリカ支持の決議案を阻止してきた。その際、「主権」や「内政不干渉」を隠れみのに、中共にとって都合のいい体制を守ってきたのである。

ごく最近では、4月7日、中国はバーレーンが起草した決議案に拒否権を行使した。この決議案は、ホルムズ海峡における海運と通商の自由な流れを確保するため、必要であれば各国が武力を行使することを認める内容だった。

中共は、安保理常任理事国としての地位を利用し、拒否権の行使をちらつかせながら、自国に不利とみなす決議案の内容を薄めてきた。北朝鮮やイランに関する決議がその典型である。アメリカが安保理を圧力の手段として使おうとするたび、事実上、まず中共の了解を得なければならない状況に置かれてきた。

人権と規範の組み替え

中共が繰り返し掲げてきた目標の一つは、アメリカ主導で設計された国際秩序を、中国主導の新たな世界秩序に置き換えることである。その実現を後押しする戦略の一つが、国連の人権システムを組織的に弱体化させることだ。

国連の内部告発者は、中共が威圧、買収、文書の書き換えを通じて、新型コロナウイルスの発生源や新疆ウイグル自治区での人権侵害に関する不都合な事実を削除させたと告発している。中国は劣悪な人権状況を抱えながらも、国連人権理事会の理事国に何度も再選され、自国で強制収容所を運営する一方で、他国の人権状況を審査する立場に就いている。

より根本的に見れば、北京が目指しているのは、世界秩序の枠組みそのものを全面的に組み替えることにある。習近平がいう「新型国際関係」とは、競争が激化する中で、アメリカの世界的指導力を掘り崩そうとする体系的な試みにほかならない。中共が、人権を重視する目標から経済発展一辺倒の方向へと議論を誘導しようとしている動きは、国連の社会・経済分野の機関でとりわけ顕著である。西側諸国が次第に後退する中、これらの分野では北京が比較的自由に動ける状況が生まれている。

結論

アメリカは、国連通常予算のおよそ22%、PKO費用の26%を負担している。これは、敵対的な勢力が25年かけて組織的に取り込んできた機関に対する、最大の財政支援にほかならない。一方、中国は、1994年には1%未満だった分担率を現在ではほぼ20%にまで引き上げ、そのアメリカより小さい負担を、はるかに戦略的に活用してきた。すなわち、専門機関トップの掌握、G77の票固め、ロシアとの拒否権連携、さらに「一帯一路」の地政学的構想を正当化するために国連の制度的権威を振り向けることに成功してきたのである。

国連加盟によって得られるとされるあらゆる利益、国際的正統性、安全保障における多国間の負担分担、国際規範の形成は、一つの前提に基づいている。それは、国連がアメリカの理念に沿う共通の価値観を反映しており、敵対勢力に掌握されていない、ということだ。しかし、その前提はもはや事実によって否定されている。北京が主導権を握る機関が、同時にアメリカ外交の延長として機能できるはずがない。一部のプログラムが機能しているからといって、全体の費用対効果が正当化されるわけではない。真の問題は「組織の舵取りを誰が握っているのか」という点にある。その答えは上の整理が示す通り明白である。

最後に、「アメリカ・ファースト」の観点から見ても、アメリカは自らに対する戦略的封じ込めの費用を、自ら最も多く負担していることになる。結論は単純だ。現在の国連に対してアメリカが全面的な支援を続けることは、アメリカの負担によって中共の力を支えることに等しい。したがって、国連は根本的に再編されるべきであり、それが不可能であれば解体されるべきだ。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
Stu Cvrk
米国の退役軍人。退役時の階級は大尉。米海軍で30年にわたり現役・予備役を問わずをさまざまな任務に就き、中東や西太平洋での豊富な作戦経験を持つ。海洋学者およびシステムアナリストとしての教育と経験を積み、米海軍兵学校を卒業。兵学校時代に受けた古典的なリベラル教育は、自身の政治評論の重要な基盤となっている。