日本の原子力規制庁で政府支給のモバイル端末をめぐる管理上の問題が相次いで明らかになった。弁護士ドットコムニュースが業務用スマホの紛失に関する行政文書を原子力規制委員会に開示請求し判明した。
災害時や緊急対応に使われる政府端末には機密性の高い情報が含まれる可能性があり、外国の諜報活動やデータ窃取への備えが課題となっている。
弁護士ドットコムニュースによると、原子力規制庁では、緊急対応にあたる職員向けに配付している「防災スマートフォン」の紛失が相次いでいる。同庁は約500〜600台の業務用スマートフォンを保有しているが、2025年度だけで10件の紛失事案が発生し、このうち2件は現在も見つかっていない。
特に問題視されているのは、2025年11月、同庁職員が私用で訪れた中国で端末を紛失した事案である。この端末には、公表されていない核セキュリティー担当部署の職員名や連絡先などの機密情報が登録されていた。
開示された文書によると、ほかの紛失場所も出張先のホテル周辺や飲食店からの帰宅途中の路上などに及んでいた。一部の事案では、職員が端末を確認する日次点検を数日間怠っていたほか、紛失に数日間気づかなかった例もあった。
開示された文書では、外国の諜報活動から重要な国家情報や職員を保護する役割を担う内閣官房の「カウンターインテリジェンス(CI)・センター」に一部の事案が報告されていたケースも確認されたという。。
同様の件として、米国においても、政府職員によるモバイル端末の管理が問題となっている。FEMAでは、職員が規定に違反し、政府支給のモバイル端末を無許可で海外に持ち出していたことが発覚した。(FedScoop:リンク記載なし)
米連邦政府のテクノロジー政策を専門に扱うメディア「FedScoop」によると国土安全保障省(DHS)の監察官報告書では、FEMAの端末は国際的に227台検出され、その中には中国やイラクなど、輸出管理規則(ITAR)の対象となる懸念国も含まれていた。
DHSのポリシーでは、海外で検出された無許可のデバイスについて、直ちに電源を切ることを求めている。しかし、FEMAは端末のデータが適切に消去されたことを示す文書を提出できず、対応の不備を指摘された。
米連邦CIO評議会は、政府端末を海外に持ち出す場合、盗難や物理的破損に加え、外国の敵対勢力によるデータ窃取の標的となるリスクがあるとのガイダンスを示している。FEMAは問題を受け、端末のデータ消去に関する記録の義務化や、無許可で持ち出された端末を無効化する手順の更新など、セキュリティ改善を進めている。
日本の原子力規制庁は、紛失した端末に対し、遠隔操作でデータ消去やロックをかけることは技術上可能であり、現時点で情報漏えいなどの実害は確認されていないとしている。ただ、職員に端末を「肌身離さず携帯する」よう求める運用ルールに依存している現状には、管理体制上の課題が残る。
政府のモバイル端末が単なる業務機器にとどまらず、外国諜報機関による情報収集の入り口になり得ることを示している。政府端末の紛失や無許可持ち出しを個人の不注意や規則違反として処理するだけでなく、遠隔ロック・データ消去の徹底、海外持ち出し時の監視体制強化、端末管理記録の厳格化が求められる。
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