中国移動がチリと進めていた海底光ケーブル計画が、米国の安全保障上の懸念と外交圧力を受け停滞した。ビザ取り消しや承認撤回の背景には、通信インフラを巡る米中覇権争いと南米の戦略的選択がある。
米メディア「Rest of World」は6月18日、この問題の経緯を報じた。
報道によると、2026年2月20日、当時のチリ運輸・通信相フアン・カルロス・ムニョス氏は、米国務省からの通知で、自身の外交ビザが取り消されたことを知った。
通知では、ムニョス氏と他のチリ政府高官2人について、「重要な通信インフラを損ない、西半球の安全を脅かした」とする理由が示された。
3人は当時、中国移動が提案した5億ドル(約780億円)規模の海底光ケーブル計画を検討していた。この計画は、チリのバルパライソと香港を結ぶものである。
中国移動は、ラテンアメリカとアジアを直接結ぶ初の海底光ケーブルの建設を目指していた。
ムニョス氏は取材に対し、ビザ取り消しによって職務に必要な渡航が制限され、大きな影響を受けたと述べた。また、自身の評価にも影響が及んだとしている。
南米とアジア接続の戦略的重要性
AIの普及を背景に、海底光ケーブルの需要は増加している。これらのケーブルは世界の通信の大部分を担っている。南米の沿岸国はすべて、海底光ケーブルを通じて米国と接続されている。
現在、この分野ではAlphabetやMeta、Amazonなど米国のIT企業が主導的な役割を担っており、チリも米国企業への依存が続いている。
チリはおよそ10年前から、アジア太平洋地域との直接接続を模索していた。米国企業への依存を減らす狙いがあり、2019年には中国との協力に傾いた。
この際、華為技術(Huawei)が上海と結ぶ海底ケーブルを提案したが、米国の懸念を背景に計画は実現しなかった。
その後も米中間の対立は続き、米国は華為の通信インフラ事業への関与を制限している。
また、中国電信や華為、中興通訊(ZTE)、アリババクラウドなどの企業は、中南米各国で5Gやデータセンター事業に関与しているとされる。
チリ通信省は2026年1月、中国移動による総延長およそ2万キロの海底光ケーブル計画をいったん承認した。
しかしその後、関係者が在チリ米国大使館で協議を行ったあと、承認は「技術的な問題」を理由に撤回された。
当時のボリッチ大統領は、米国側から長期的な対応が示唆されたことを受け、計画の見直しを指示したと説明している。また、海底ケーブルに関する判断は公開の議論を経るべきだとしている。
2026年3月に就任したカスト大統領は、米国との関係強化を進める一方、中国との関係も維持する姿勢を示している。
その後、在チリ米国大使は、中国移動の計画は終了したとの認識を示した。
一方、チリ政府は当初、グーグルが関与する海底ケーブルの存在を理由に、新たな計画は必要ないとしていたが、最近では「引き続き評価中」としており、最終判断は示されていない。
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